日韓トンネル研究会めぐる
旧統一教会との関わり

 もう一つ、博之と鉄道の関わりとして「日韓トンネル研究会」の顧問を務めていたことが知られている。これは福岡県から対馬を経由して朝鮮半島に至る全長約230キロメートルの鉄道海底トンネルの実現を目指して1983年に設立された団体だが、背後には旧統一教会とその関連団体の存在が指摘される。

 日本と朝鮮半島、満洲を直結する海底トンネルを建設しようという発想は戦前から存在しており、統一教会の専売特許ではない。だが対馬~朝鮮半島間の水深は津軽海峡(青函トンネル)やドーバー海峡(ユーロトンネル)を超える160~230メートルであり、技術的実現性は低い。

 また研究会が主張する総事業費10兆円に収まったとしても費用対効果は期待できず、韓国政府も日韓トンネル構想には経済性がないとの見解を示しているが、それでも「事業」が推進されるのは、旧統一教会が献金の口実に掲げているからだとされる。

 しかし日韓トンネル研究会の会長は、小泉内閣で法務大臣を務めた元参議院議員の野澤太三氏であり、また2008年には鳩山由紀夫氏と衛藤征士郎氏を中心に、自民、公明、民主、社民からなる超党派の「日韓海底トンネル推進議員連盟」(こちらは道路トンネルの構想だった。2011年解散)が設立されるなど、自民党に限らず政界とのつながりが深いのが実情だ。

 旧統一教会との関係を問われた博之は昨年、日韓海底トンネル推進議員連盟の顧問を務めていたことはあるが辞任したとの調査結果を公表したが、すぐに実際は日韓トンネル研究会の顧問だったと訂正したことがある。このことが示すように、顧問は名義貸しであり、具体的な活動をしていたわけではないだろう。しかし、鉄道族を代表する立場でありながら、このような運動に関与していたのは残念な話だ。

 とはいえ、細田博之が鉄道業界に貢献した議員の一人であったことは事実である。ここに追悼の意を表し、本稿を終わりたい。