加えてタクシー運転手は、道路交通法に基づき普通第二種免許を取得しなければならない。普通自動車運転免許、第一種免許では運転手になることはできない。

 これらの厳格な規制が設けられているのは、国民の安心安全の確保や公共の福祉のためにほかならない。

 さて、現状でライドシェア、つまり白タクの解禁議論をけん引しているのは、新自由主義的傾向の強い政治家たちである。

 例えば、菅義偉前首相は「ライドシェア解禁は避けて通れない」とまで発言して、強力にこれを後押ししていこうとしている。また、小泉進次郎元環境相は「私はライドシェア推進派ではありません。タクシーとの共存派です」と発言し、こちらも導入を推進していく姿勢を示している。

 タクシーとの共存派と言っても、結局はライドシェアを導入してタクシーと併存させるということなのだから、導入推進派以外の何者でもない。要は「ライドシェア推進派ではありませんが、導入を推進します」と言っているのと同じである。安定の「進次郎ポエム」である。

ライドシェア解禁議論に火をつけた
Zホールディングス社長の発言

 さて、ライドシェア解禁・導入に向けた事業者側からの動きは以前からあったが、直近でこの話に再び火がついたのは、本年3月29日に開催された第15回新しい資本主義実現会議においてである。

 発言したのは、Zホールディングスの川邊健太郎社長(当時。現LINEヤフー会長)である。具体的には、「地域交通ネットワークの再構築」に関し、完全な自動運転の実現はかなり先のことであるから、「ライドシェアサービスの拡充に努めるべき」であるとし、日本を「完全に移動後進国」であるとまでした上で、「既存の事業者に対しては政治が補償し、圧倒的大多数の国民に、ライドシェアのメリットを提供すべきだ」とした。

 だが、海外の専門家が注目するほど大都市を中心に公共交通を充実させてきた日本のどこが「完全に移動後進国」なのか意味が分からないし、プライベートかつ任意にしか提供されていないライドシェアが地域交通ネットワークの一部を構成しうるわけがないのであるから、まさに完全に論理破綻している主張と評せざるをえない。