今回から『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』著者の山口揚平さんが「お金」をテーマにさまざまな人たちと語り合う、対談シリーズとなります。第1回のゲストは、ライフネット生命保険社長の出口治明さん。山口さんが約1年半前にこの書籍オンラインで書いたある記事を、称賛してくださったご縁もあり、本対談が実現しました。同記事「世界は3層構造でできている」の趣旨は、冒頭挙げた新刊でも取り上げられています。まず口火を切ったのは、出口さんでした。

ピカソとゴッホには生活感覚の違いがあった

出口治明(でぐち・はるあき)

出口治明(以下、出口) 僕は絵が好きなので、この本のタイトルを見ただけでワクワクします。そもそも、なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったんですか。

山口揚平(以下、山口) ゴッホとピカソを比較すると、ピカソは自分の信用や価値をお金に換える感覚やスキルを持っていたのに対し、ゴッホは自分の価値をマネタイズすることができなかったという違いがあります。

 本の中にはピカソのエピソードをいくつか登場させているのですが、たとえば、ピカソは新しい絵を描き上げるとなじみの画商を数十人呼び、作品についてのストーリーを語ったうえで、最後に絵を見せるという話が出てきます。画商が絵そのものよりも背景やストーリーに値をつけること、画商どうしの競争原理が働いて絵の値段が吊り上がることを、ピカソは知っていたのです。

 また、これはよく言われている話ですが、ピカソはどんなに小額の買い物でも現金ではなく小切手を使っていたといいます。なぜなら、ピカソは当時から有名だったので、ピカソから小切手をもらった商店主は……。

出口 ピカソのサインが入っているから、小切手をキャッシュに変えない。記念切手と同じように、収蔵してしまうのでしょう。

山口 そうなんです。それでピカソは、キャッシュアウトを抑えられた。ピカソは、自分の信用をお金に換えるスキルを持っていたんですね。今回上梓した『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』は、冒頭でピカソがお金についてどのように考えていたのかというエピソードを紹介しているほか、タイトルもキャッチーです。

 でも中身は「お金とはそもそも何か」について読者に知ってもらい、お金と自分のパートナーシップを豊かなものにするための考え方を語っています。

出口 なるほど、おもしろいですね。

 ただ、ピカソも画家としての前半生は貧しかったと聞いています。2人で暮らしていたピカソの家には服が1着しかなかったため、一緒に出かけられなかったそうです。ですから今のお話は、ピカソの名前が知られるようになった後半生の話ですね。芸術家にはふたつのタイプ−−−好きなことをやっているだけでいいという生活感覚の弱い人と、生活感覚の強い人がいるようです。ピカソとゴッホには、そういう違いがあったのでしょうね。