──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

市井の人に対する影響としては、コロナ禍による非正規従業員の雇用の喪失や円安の余波による物価の上昇など、生活資金に関する悩みは事欠かないと思います。

そういった点ではお金の短期的な工面といった点で、課題を解決するサービスには注目が集まると考えています。具体的にはタイミーのような即金で給与が受け取れる短期求人サービスや、LINEポケットマネーやメルペイスマートマネーのような従来の消費者金融やカードローンなどの伝統的な与信に頼らない、独自の与信によって今までお金を貸すことができなかった人にお金を貸せるビジネスは躍進が続くのではないかと考えています。

スマートバンクはFintech領域の事業に張っているということもあり、デジタル給与払いの解禁による、資金移動口座での給与受取によるバンキングの進化や、AI与信による与信ビジネスの進化など、2023年は往年の金融プレイヤーと新興の金融プレイヤーの世代交代の試金石になる年ではないかと思います。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

アメリカのテック株下落の影響から、未上場市場の投資ラウンドの大型化やバリュエーションの高騰を牽引していた海外クロスオーバーファンドの撤退が余儀なくされており、ここ10年続いた調達環境のブルマーケットが終焉に向かっています。

日本にも時差的に影響が現れる前提で、明確に既存事業・顧客のユニットエコノミクスなどの一定の枠の中でコントロールできたキャッシュフローが必要なフェーズとなり、事業計画をデフォルトアライブ(支出が一定で収益が伸び続けている状況)に大幅変更すること、具体的には24カ月ランウェイの確保、コスト計画(広告宣伝費、人員計画)の大幅な見直し、合わせて資本市場からの評価ポイントの変更に伴う、事業目標の再設定(限界利益、LTV/CACなど)をしました。「激しい変化にいち早く対応できたものだけが生き残れる」ことをしっかり認識したいと思います。

吉兼周優 / Azit代表取締役CEO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

市場が冷えている。