気候危機とその対策です。「何がトレンドになると思うか?」という予想というより、トレンド・議論の中心になるべきという意思を込めてです。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

セカンドホームのサブスクリプションサービス「SANU 2nd Home」という建築とリアルに向き合うスタートアップとしては、「ウッドショック」に伴う木材の原材料価格の高騰には一定の影響を受けました。

福島良典 / LayerX代表取締役CEO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

SaaS+Fintech、Generative AI、Web3。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

SaaS+Fintechは、2022年に堅調さが証明されたビジネスモデルです。株式市場の落ち込みからSaaS企業、Fintech企業には逆風の1年になった一方で、この環境下でもSaaS+Fintechの複層構造でビジネスを展開している会社は株価を堅調に維持しています。未上場企業でも(米スタートアップの)RampやDeelがARR(年間経常収益)100億円を当時の史上最速で達成しました。日本でも間違いなく、このトレンドは巨大なものとして認識しておくべきです。

Generative AIに関してはStable Diffusion、ChatGPTといった画像生成や言語生成などの生成型AIが一気に盛り上がりました。圧倒的なメガトレンドであり、AIの応用例といえば推薦や異常探知、画像認識というパラダイムが一気に置き換わったと思います。今後AIがあらゆる産業に与える影響の質が大きく変わった転換点と捉えられる1年になるのではないでしょうか。

Web3に関しては、オープンソース2.0の要素を兼ね備えた公共財的ソフトウェアのインセンティブ革命だと思っています。バズワードとして今後も手を替え品を替え、言及されると思いますが、本質は公共財的ソフトウェアをどう作るかであり、そこに集中している会社が確実に伸長した1年だったのではないでしょうか。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

株式市場などの外部環境は引き続き逆風が続きますが、現在進行形の長期での価値変遷のトレンドは変わらないと見ています。個人的に期待・注目している領域は、「オンプレミスソフトウェアからクラウドSaaSへの転換」、「巨大産業(製造業、建築、物流、小売、教育など)のDX」、「業務ソフトウェアとFintechの体験融合(SaaS+Fintech)」、「金融機能のアンバンドリングとその組み込み(Embedded Finance)」、「ML(機械学習)/AIのソフトウェアプロダクトへのシームレスな組み込み」です。