起業家にとっては、引き続き逆風の1年になると思いますが、そういう時こそブレずに長期トレンドの中でしっかりと顧客価値を積み上げる会社が本物になっていくはずです。そういう意味では、ベンチャー企業の淘汰が進む1年になるでしょう。同業種同士のM&A、再投資を加速するための非上場化などによりダイナミックな資本を使った動きも活発化するのではないかと思っています。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

株式市場の変動はスタートアップにも当然影響を与えるので逆風を感じる1年でした。一方で、バリュエーションの調整はあったものの、スタートアップへの投資金額という意味ではそこまで縮小はしていないと思っています。まだまだ市場にドライマネーは残されており、クレバーな会社はそこの資本をしっかり取りに行き、今後訪れるであろう冬の時代に対する備えをしました。今年の影響は、むしろ2〜3年後により顕著に現れるのではないでしょうか。個人的には経営力が試される1年だったと思います。

スタートアップは明確に調整局面ではあるものの、長期のトレンドは変わっていません。より強烈な淘汰が2023年以降に始まりますが、その中で本物の会社が生まれていく。私としては経営の当事者として、本物の会社になれるよう経営努力をしていきたいです。どんな時でも、「長期のトレンドを信じ、顧客価値を高める」ことに集中することが大事ですが、外部の環境による迷いから集中がどうしても阻害されるのが一番大変でした。

古川健介 / アル代表取締役

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

NFT。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

いよいよ、本格的にNFTが事業化するタイミングが来たと思います。CryptoNinja Partners(CNP)やAopanda Partyなど日本発の人気NFTが生まれたことに加え、大手企業などがNFT事業に参入するなど、かなり盛り上がってきました。

NFTが「一点モノのアートを買う」や「人気IPをNFT化して売る」みたいな初期のよくわからず売っている状態から、きちんとNFTを活用した、NFTならではの便利さを考え始める人が増えているのがとてもいいなと思ってます。「意味がある」しかなかったNFTがおそらく「役に立つ」のフェーズに向かいつつあったのが2022年だったと思います。