僕は今年30歳で、いわゆるミレニアル世代(1980年代〜1990年代なかば生まれ)の人間です。僕らの世代にとって「情報リテラシーが高い」ということは、「いかに自分が欲しい情報を探しにいけるか」ということを指しました。つまり、情報を「自分から取りに行く」というスタンスを意味します。
それがZ世代の場合だと、情報は気づけばすでにスマホに集まっている状態です。なので、リテラシーの高さとは、「いかにして目の前に出てくる情報を取捨選択するか」を意味するようになったと思います。さらには、「もはや自分で選びすらしない」という段階まで進みつつあるというのが、「アルゴる」という言葉に込めた意味です。
Z世代は本当にTikTokをよく見ますよね。それはなぜでしょうか。InstagramやX(旧Twitter)、Googleは、基本的には自分たちから何らかのアクションをしないと欲しい情報に接触できません。それに対してTikTokは、アプリを開いた瞬間にショート動画が流れてくる。しかもアルゴリズムがその人好みの情報を取捨選択してくれているので、情報が自分にフィットしている度合いが異常に高い。自分が本当に興味のあるものを先回りしてレコメンドしてくれる——TikTokがZ世代を引きつけるのは、そんなイノベーションを起こしているからです。
それゆえZ世代においては、文字情報での検索だけでなく、動画を検索するという行為が一般的になっています。例えば、北海道のニセコ町に旅行しようという時、僕はGoogleやInstagramを見てしまうんですが、Z世代はそこでTikTokを見る方が多い。ショート動画に情報がまとまっているので、検索して文字を読むよりも、「この人気の動画さえ見れば、ニセコで何をすればいいかが一瞬でわかる」ということなんです。
これは、「コスパからタイパ(タイムパフォーマンス)へ」という価値観の変化とも合致します。タイパとは、いかに短い時間で効率よく対価が得られるか、ということです。情報量が増えすぎたことで、可処分所得だけでなく可処分時間が足りなくなっているんです。
——ニセコへの旅程をTikTokで決めてしまうことはあっても、例えば車のような高額なものを買うとなると状況が違うと思います。Z世代は、自分の状況に応じて接触するメディアを使い分けたりしているのでしょうか。
おっしゃる通り、一般的にZ世代は可処分所得が少ないので、適当にお金を使うということはありません。重要な意思決定に関しては、もちろん入念にリサーチや比較検討をした上で決定すると思います。ですが、比較検討の入り口がTikTokであることが多いのです。もっと言えば、TikTokを見ているうちに「これがやりたい!こういう人に憧れる!」となって、やりたいことや目指していくものが見つかることもあります。