2年前、大学生達にどのアーティストや芸能人が好きか聞いたところ、King Gnuの常田大希さん、モデルの水原希子さん、EXITの兼近大樹さんの回答が目立ちました。外見で選ばれたのかもしれないと思いましたが、話を聞くと別の理由がありました。
常田さんは、「King Gnuではあえてマス受けする音楽を作り、自分たちが本当にやりたい音楽は、別のアーティスト名義でやっているんだ」というところです。水原希子さんは、自らがランクインした「美しい顔ランキング」というのを、ルッキズム(外見至上主義)の権化だ、と痛烈に批判したところが評価されていました。兼近さんは、芸人だって政治の話をしてもいいと、毅然(きぜん)として話していたからという回答もありました。
いずれにも共通するのは、外見(の美醜)ではなく独自の思想やスタンスを推している、という点です。どんなに人気者であれ、必ずアンチ(批判者)はいます。誰もが情報を発信できる今日、メディアはそんなアンチの声をも届けられる状況になっています。そんな時代だからこそ、ただ「格好いい」「可愛い」という主観ではなく、「King Gnuは、あえてマス受けする音楽をやっている」と、ファクトで言える要素があること。ファンではない人に対しても客観的に推し要素を伝えられることが、推しやすさに繋がっているんです。アーティストをブランドと言い換えるならば、「ブランドとして思想があるかどうか」が、フォロワーやファン、ユーザーを築く上では重要なのです。推しやすさは、デザインできます。
同じく、「メディアとして思想があるかどうか」が明確であることは大事だと思います。その思想というのは右か左かとかいう話ではなくて、「どんな社会をつくるのか」という、ビジョンとコンセプトの明確さです。
もっと言うと、「理想の社会をつくるために、何をして何をしないか」という、“to do”と“not to do”が明確かどうかです。何を“するか”を考えることも大事ですが、何を“しない”のかまでを明確にすることも重要です。その上で、届ける情報の内容が切り口を含めて共感できるようなメディアであれば、Z世代が読みたくなるのではないかと思います。
Z世代は「この人と仕事をすると、どんな世界に行けるのか」で仕事を選ぶ
——分かりやすいロールモデルがなくなってきたという話がありましたが、キャリアについて着目するとどうでしょうか。かつては東大法学部を卒業したら官僚を目指す、というロールモデルがありました。それが今では、外資コンサルが人気になったり、自分でスタートアップ企業を立ち上げたりする人も少なくありません。