もちろんその先でGoogle検索をする、という行動はあると思います。最初にTikTokで見つけたものについて、Twitterで口コミを調べたり、Googleでメディアでの言及を検索したりする——つまり、メディア自体に優劣をつけているというよりは、メディアを活用する順番が違うということです。

透明でフェアな「生の声」がZ世代を引きつける

——先ほど情報リテラシーについての言及がありましたが、Z世代は「情報のソースを確かめよう」という意識が身についているのでしょうか。

情報の一次情報を確かめるというよりも、無加工の「生の声」を知りたい、ということがあると思います。例えば、一時期インフルエンサーなどによるステマ(ステルスマーケティング)が問題だとして騒がれましたが、その頃からSNSでは「ほぼこれ広告案件だろ、PR案件だろ」と指摘されるようになりました。つまり、その情報が「本当に言っていること」なのか「言わされていること」なのかを重視しているのです。

背景にあるのは情報流通構造の変化です。かつてはマスメディアが発信する情報こそがほぼ全てでした。しかしウェブメディアやSNSの隆盛により情報の非対称性がなくなり、メディアだけでなく個人まで、誰もが情報を発信できるようになりました。

広告で宣伝されている内容や、メディアで取り上げられている内容だけでなく、SNSでの個人の意見や感想もウォッチすることができる。だからこそ、「その情報って実は嘘なのかもしれない」と疑い深くなり、透明性にすごく敏感になっているのが、Z世代の特徴であり、時代の流れだと思います。誰かにお金をもらって言わされていることではなくて、本人のいち意見としてフェアに言っているのかどうかをすごく大事にしている、という感覚があります。

そこで、友人関係も「グループ管理(組織など、第三者が設けた枠組みにひもづいた管理)」から「タグ管理(趣味嗜好など、個人的な要素にひもづいた管理)」になったとも言えます。学校で会うクラスメイトよりも、SNSでしかコミュニケーションしたことがない人の方が仲がいい、といった、バーチャルな関係性が、リアルを超える関係性にもなりうる時代になっています。

Photo: Pekic / gettyimages

「推しやすさ」がフォロワーを築く上では重要

——Z世代はマスメディアの情報を一次情報として受け取りつつも、どこか生の声を感じないといった不満を感じているのでしょうか。

ありふれた言い方ですが、これからはメディアとして「推せるかどうか」が重要なポイントになると思います。昔はマスメディアがいわゆる正解やロールモデルを決めてくれていました。例えば、安室奈美恵さんや木村拓哉さんのように、その時代の国民的なロールモデルが常にありました。ですがメディアが細分化し、個人がもはやメディアとしての力を持つ今、みんなが追いかける唯一無二のロールモデルというものがなくなりました。一人ひとり、接触する情報が異なるので、「老若男女が応援する国民的アーティスト」はZ世代には存在しません。