テックタッチのビジネスモデルは社内で利用するユーザー数と、対象となるシステム数を軸にした月額定額制。大企業内でさまざまなシステムに活用されれば、同社の事業に与える影響も大きい。このユースケースは井無田氏が以前から狙っていたものだ。

また具体的な領域としてはコールセンターとも相性がいいと感じているそう。オペレーターが頻繁に入れ替わるため教育コストがネックになることに加え、「データ入力業務が多く、その際の入力ミスや後工程でのデータ整形作業の負担が大きい」(井無田氏)ことも課題になっている。

テックタッチであれば操作ガイドを通じて新人スタッフを手助けしつつ、入力フォームに入力制限を設けることで、入力ミス自体を防止することもできる。その機能に対する反応が良いこともあり、コールセンターは今後顧客を広げていきたい業界の1つだという。

あらゆる人々がシステムを自在に使える仕組みへ

テックタッチのアイデアは、井無田氏が以前コンシューマー向けのアプリを開発していた時の経験が影響している。

井無田氏はドイツ証券や新生銀行を経てユナイテッドに入社。スマートフォンのホーム画面をカスタマイズできる着せ替えアプリ「CocoPPa」を運営する米国子会社の代表なども務めた。当時を振り返った時に「もっとユーザーをプロダクト開発に活かせればよかった」という思いがあり、事業を立ち上げるにあたっては企業とユーザーの関係性構築を支援するようなサービスを模索した。

アイデアを検討する中で行き着いたのがテックタッチの原型だ。2018年にユニコーン企業となったWalkMeを始め、世界ではすでに複数社がウェブシステムの「利用定着支援」に取り組んでいることを知り強い関心を持った。

決定的だったのは、構想段階で大企業を中心に50社ほどの担当者にヒアリングをした際の反応だ。最初の10社にヒアリングをした時点で、システムの利用定着には大きなペイン(業務における課題)があることを実感。同時に、テックタッチのプロダクトに対する熱狂を感じた。また、単なるコスト削減や生産性向上だけでなく、これまでITを十分に使いこなせなかった企業や個人をエンパワーする事業にもなりえると手応えも得られたという。

「システムの作り手の考えや理想をすべてのユーザーに伝えることは難しい。時にはシステムとユーザーとの間にギャップができてしまうということを、過去の実体験からも感じました。テックタッチで実現したいのは、そのギャップを埋めて作り手の思いとユーザーを繋いでいくこと。それを通じて、あらゆる人々が思いのままにシステムを使いこなせる世界を作っていきたいと考えています」(井無田氏)