「この1年ではやはり大企業への導入が広がっています。本社オフィスもそうですが、増えているのはコワーキングスペースやサテライトオフィスでの活用。本社以外の拠点もしっかりとセキュリティを担保しつつ、入退室や勤怠の情報などは一元管理したいというニーズがかなり強くなっています。特に新型コロナウイルスへの対策として郊外や地方にも仕事ができる拠点を設ける企業が増えている印象で、その際にAkerunを導入いただくことも多いです」(河瀬氏)

また地方企業からの問い合わせも増えた。コロナ禍において「ハンコを押すためだけに出社する」ことの是非が大きな議論にもなったが、地方では管理職など一部の社員しか鍵を持っていない企業もあり、「鍵の受け渡しのためだけに出社する」ケースが実際にいくつも発生しているそうだ。

鍵の受け渡しをクラウド上でやりたい、誰が出社しているのか勤怠状況を把握したいという声が今回のタイミングで一気に増加した。それもあってフォトシンスでは6月に福岡にも拠点を開設し、地方企業への対応にも力を入れ始めている。

冒頭でも触れた通り現在Akerunの導入企業社数は4500社を超え、アカウント数も66万人を突破した。

「ほとんどは東京都のオフィスワーカーに使われていて、都内のオフィスワーカーにおける利用率は7.4%。割合的には100人に聞けば7人はすでにAkerunでオフィスの鍵を開けているような状態です。少しずつではありますが、インフラとして広がってきているという手応えはあります」(河瀬氏)

都内中心地のAkerun導入企業マップ(セキュリティの関係上マップの位置を微妙にずらしてる)
都内中心地のAkerun導入企業マップ(セキュリティの関係上マップの位置を微妙にずらしてる)

「全ての扉を1つのIDで開ける世界」の実現へ

今回の資金調達はさらに多くの企業の課題を解決すべく、既存事業の改善・拡大に向けた人材採用や販促活動の強化に用いる。ただそれに留まらず、創業以来のビジョンとして掲げてきた“キーレス社会”の実現に向けた研究開発にも投資をする。

そこでキモになってくるのが新戦略となるアクセス認証基盤のAkerun Access Intelligenceだ。このAkerun Access Intelligenceとは一体何か。大雑把に説明すると「AkerunユーザーID」と紐づいた交通系ICカードに対して、様々な場所に設置されたAkerunへのアクセス権限を付与できる仕組みだ。

要はAkerunがあらゆる場所に普及すれば、普段使っているSuicaやPASMOを1枚持ち運ぶだけでオフィスからホテル、自宅まで様々な空間に出入りできるようになる、ということになる。