もちろん、日本でも現在、第二波と言われるようにコロナ感染者が再び増加しているので、安全という訳では全くない。しかし、ファクトベースで世界の中で比較すると、日本をはじめとした東アジアは、現時点では、世界の中でも影響が少ないエリアと言える。
中国では、4月ごろから生活が通常の状態に戻りつつあり、当社の上海支社(WeWork)も5月からは通常通り週5回のオフィス出勤に戻った。事業売上も4月にはコロナ前の12月同レベルまで回復している(もちろんECサイト、キャラクターライセンスなど影響が少ない事業ではあるが)。また、コロナ前の段階で、世界で最もDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進んでいたのも、withコロナ時代に中国の経済・日常が一気に回復してきているポイントだ。
アプリを通じた飲食店のテイクアウトやデリバリーはコロナ前に当たり前の日常体験になっていたし、ECもモールでユーザーが自ら検索して買うだけではなく、ソーシャルメディア経由での購入や、ライブ配信動画アプリ経由でのライブコマースなど、ユーザーのエンタメアプリ導線の中に、「モノを買う仕組み」が組み込まれていた。店舗、デリバリー、テイクアウト、ECでとオンライン・オフラインを問わずに簡単に決済できるAliPayなどQRコード決済の普及もコロナ前の話だ。
そして、コロナ禍でのエンタメ領域の状況として、「抖音」(TikTokの中国版アプリ)や「快手」などの短尺動画アプリが大きく売上を伸ばしたことにも、中国のコンテンツの行方をうらなうヒントがある。
次の動画プラットフォームとして存在感示す、中国版TikTok
日本だと、まだまだ「若者のエンタメアプリ」という認識のTikTok。だが、本国の抖音では利用世代も広く、企業も公式アカウントを開設するなど、新しい動画のプラットフォームとして台頭してきた。
メインコンテンツである短尺動画だけでなく、ライブ配信(投げ銭)、ライブコマース、ECなどの機能やコンテンツを組み合わせて、次なるユーザー体験を提供している。コロナ禍では、淘宝(タオバオ)や、京東(JD.com)といった従来のEコマースサイトもライブコマースによって大きく売上を伸ばしているが、エンタメを起点にした短尺動画やSNSアプリがライブコマース市場の中で大きく存在感を示したのは大きい。
コロナ禍でのライブコマースでは、もともと、若者に人気のあった配信者だけではなく、中国最大手の旅行代理店 Trip.comの代表や、閉鎖された百貨店の店員さんによる配信・販売など、配信側、購入側、双方の幅が広がった。