加えて、春節に公開予定だった映画「ロスト・イン・ロシア」が、映画館閉鎖に伴い、抖音内で完全無料公開されたこともニュースになった。「ロスト」シリーズは、興行収入200億円を越える人気作だが、抖音を運営するByteDanceが約100億円の費用で配信権利を獲得したと報道されている。

もちろん、これは映画館にとってはネガティブな状況だ。業界団体は、映画全般を管理する「中国国家映画局」に対して配信についての抗議・嘆願をしたとも報道されている。だがwithコロナの時代において、エンタメ・コンテンツの各プレイヤーが、自らのできる範囲で、どれだけ即座に行動すべきかを表した例とも言える。

これらの中国の事象は、日本に置き換えて、今後の展開を考える意味でも価値があるし、日本から直接、中国市場に乗り込んで、コンテンツを輸出するという選択肢も考えられる。ちなみに中国法人などを通じて抖音でのコンテンツ配信は可能で、クオンでも、昨年10月からADKエモーションズ、ファンワークスと共同でショートアニメ「破裂蛋蛋君」の配信開始している。

クオンが展開する
クオンが抖音で展開するショートアニメ「破裂蛋蛋君」 クオンのプレスリリースより

また、中国大陸だけでなく、台湾では、5〜6月の2カ月間の新型コロナ感染者数はわずか10名程度で新型コロナの封じ込めに成功しており、小売店、カフェ、イベントなどが続々と復活している。

日本国内のイベントを後回しにして、台湾でのイベントを優先するといった日本のアニメ・キャラクターコンテンツメーカーの話も聞こえており、実際、当社のキャラクターで台湾で人気のある「うさぎゅーん」は、6月10日から、台湾のパートナー主催で、期間限定カフェとポップアップストアを、大々的にオープンした。残念ながら現地には渡航できないのだが、渡航しなくてもコンテンツは拡げられる一例といえる。

急伸するTikTok、米・印での苦悩

世界全体のデジタルコンテンツを相対的な力学で捉えた際にも、日本より先にwithコロナ時代に突入した東アジアのプレイヤーの動向や取り巻く環境の変化は、良くも悪くも非常に参考になる。

コロナ禍でさらに大きく成長した中国のByteDanceや短尺動画アプリ企業は、中国の次に明らかに米国市場を狙っている。ByteDanceは、5月18日には、米The Walt Disney Company(以下、Disney)で動画配信事業の責任者を務めたケビン・メイヤー氏をCOO(最高執行責任者)兼米TikTokのCEOに迎えたと発表した。