このまま、世界中にプラットフォームを拡大するかと思われたTikTokだったが、7月7日に米国のトランプ大統領は、TikTokの米国内での使用禁止を政府内で検討していると認めた。またMicrosoftやTwitterとの買収交渉に関する報道も続いている。もともと中国国内向けの抖音とグローバル向けのTikTokは別運営されているが、中国資本であること自体が大きなリスクになってしまった。

また、中国との国境付近での軍事的紛争が発生したインドでは、米国に先んじて、TikTokの使用を禁止した(他にもWechatなども禁止している)。インドにおけるTikTokのダウンロード数は6億件以上。10億ドルの投資やデータセンターの開設を計画していたと報道されており、ByteDanceに取ってはかなりの痛手ではないだろうか。

その隙をついて、Facebook社は、インドを狙う。インドでTikTokが禁止になったタイミングで、Instagramの「Reels」の機能がテスト的に解放された。

Reelsは、TikTokのようなUI/UXの機能で、先んじてブラジルなどでテストローンチされていた。中国発のデジタル・プラットフォームは、コロナ禍で大きく伸びている一方で、混乱する各国の社会情勢を背景に、利用が制限されていく事が予想される。中国発のプラットフォームに限ったことではないが、国の分断がプラットフォームに影響する状況は、しばらく続くのかもしれない。この機能は米国時間の8月5日に正式ローンチしており、すでに日本でも多くの投稿が行われている。

DXとグローバル化で大きく動く近隣国のエンタメ

プラットフォームがグローバルで分断されている今、エンタメ・コンテンツ領域のプレイヤーはどのように動くべきなのか? 中国と同じく一足先にwithコロナ時代に突入した韓国のエンタメ産業にもそのヒントがあるのではないだろうか。コロナ禍で視聴者数を増やしているNetflix上では、韓国の放送局や制作会社発のドラマが多数配信されており、日本でも「愛の不時着」「梨泰院クラス」などがこの数カ月で大人気になっている。

韓国エンタメ産業は、Netflix上でのドラマコンテンツに加えて、コロナ前から米国を席巻していたBTSやBLACKPINKなどのアーティストによる音楽コンテンツや、米国アカデミー賞を獲得した「パラサイト」などの映画コンテンツ、梨泰院クラスの原作にもなったウェブトゥーン(デジタルコミック)コンテンツなど、世界へのコンテンツ供給国としてのポジションを確立して来ている。また、中韓政治情勢悪化により、一旦閉まっていた韓国コンテンツの中国市場への輸出も、この状況下で再度加速するだろう。