ユニークな例としては「オンライン瞑想」の予約にも使われている。リアルな場で早朝に瞑想の講座を開いていた指導者が、その様子をInstagramの鍵アカウントを通じて配信する。月額1000円のため自宅から気軽に参加でき、数十人が登録しているそうだ。

こうしたオンラインサービス提供の仕組み自体は以前からMOSH内に存在していたものだが、籔氏の話では「モチベーションが高い一部の人を除いて、ほとんど使われなかった」という。事実、今でこそMOSHを使って販売されるサービスの約7割がオンライン型のものになっているものの、昨年末時点では9割以上がオフライン型だった。

「サロンやスタジオなどのリアルな場所に所属されている方も多く、オフラインでやることを非常に大事にしていました。そのため以前はオンラインサービスを提案しても断られることが圧倒的に多かったんです。ただコロナの影響で店舗がストップしてしまったことを機に、自分のSNSを活かしてオンラインでビジネスをしてみようという人が増えました。実際に試してみると顧客からの反応も良いので、『これからはオフライン+オフラインの形がスタンダードになるよね』と認識が変わった人も少なくない。今まではごく一部の人のみが共感していた考え方が、この数カ月で一気に共通認識になった印象です」(籔氏)

MOSHでは個人のオンラインサービス提供を後押しするべく、5月にはサービスの予約が入るとZoomミーティングが自動で作成される「Zoom連携機能」を実装した。これは今や多くのユーザーが利用する人気機能にもなっている。

 
オンラインでのサービス提供の需要が高まり「流通総額」、「予約・取引件数」ともに急増した

スマホ+SNS時代における、個人向けサービスEC

個人がオンライン上でサービスを販売できるツールはMOSHだけに留まらない。先日ヘイがグループ会社化したCoubic(オンライン予約システムを展開)はこの領域の先行プレイヤーに当たるし、既存ツールを組み合わせても同じようなことができる。

実際にMOSHユーザーの中にも以前はCMS(コンテンツマネジメントシステム)の「WordPress」やウェブサイト作成サービスの「Wix」などに決済ツールを紐づけたり、「Peatix」などのイベント系ツールを活用したり、BASEやSTORESでサービスを出品したりすることで対応していた人もいるようだ。そういったユーザーがMOSHを使うようになったのはなぜだろうか。

「複数のツールを使い分けながら、自分でホームページを立ち上げて(単発や月額サブスクなど)数パターンのサービスを提供し続けることは多くの人にとって難易度が高い。『MOSHではそれがスマホから、ワンストップで簡単にできる』と説明すると気に入って頂けます。初期は単発のサービスのみであったとしても、事業の延長線上に月額プランや回数券、デジタルコンテンツ販売などの展開を考える方がほとんどです。将来的に必要になるものも含め、基本的なユースケースに沿った機能を取り揃えているので(複数の選択肢で比較された際にも)選んでもらえていると思っています」(籔氏)