アップルの強みは、スマートフォンのハードウェアやCPU/GPUといった半導体から、OSやアプリレイヤーを含めたプラットフォームの全体を自社で設計する能力があることだ。“小型5Gスマホ”が実現した秘訣は、デバイスからアプリまで、スマートフォン全体で5Gネットワークに最適化させたことにある。その一例として、iPhone 12シリーズには5Gの高速通信が必要なときだけ有効化される「スマートデータモード」 が実装したことが紹介された。
5G普及の起爆剤となるか
初期の5Gが唯一持つ利点は、「通信が速くなる」ことだ。高速な通信が可能になると、多くの通信を素早くさばけることから、結果として混雑する地域でも安定した通信が提供できるようになる。
ただし、障害物に弱い5Gの電波でエリアを拡大するには、4G LTEよりも多くの基地局を展開する必要がある。多数の基地局を展開するためには、5Gを使うユーザーを増やす必要がある。携帯キャリアにとっては、より効率の良い5Gへの移行を進めたいが、エリアが狭いため移行を促せないというジレンマに陥っている。iPhoneはその起爆剤としての期待を集める。
iPhone 12の発表イベントでは米国の携帯キャリアVerizon(ベライゾン)のCEO Hans Vestberg氏がゲストとして登壇し、Verizon 5Gエリアを全米に展開する方針を表明した。Verizonの5Gサービスは現在、米国の6都市での展開に留まっているが、iPhone 12の投入を機に、これを大きく拡大する計画だ。
なお、Verizonは5Gでも特に高速だが、掴みづらいミリ波帯を中心としたネットワークを展開している。米国で発売されるiPhone 12シリーズは全モデルがミリ波に対応する。Vestberg氏は「もはや5Gは夢物語ではない」とVerizon 5Gが実質的なスタートラインに立ったことを強くアピールした。
ライアットゲームズからは、人気ゲームシリーズ『League of Legends: Wild Rift』の次期バージョンのiPhone向けの投入が発表された。Verizonは同社との協力により、人気タイトルを5Gのキラーコンテンツとして訴求していく狙いだ。
日本の3キャリアもPhone 12シリーズで5G対応へ
アップルはiPhone 12シリーズでの5G対応に向けて、世界30の地域の100以上の携帯キャリアと調整を重ねてきた。その携帯キャリアとして紹介された各国のキャリアのロゴが入ったスライドには、NTTドコモ、au、ソフトバンクという日本の大手3キャリアも並んでいる。この3社が新モデルも展開するのは、ほぼ確定したといって良いだろう。