HDR動画対応の「Super Retina XDディスプレイ」

ここからはアップルの発表をなぞりつつ、新モデルの特徴をおさらいしていこう。4モデルの基幹部品はすべて共通で、チップセットは自社設計のApple A14 Bionicを搭載している。9月に発表されたiPad Air向けと共通の半導体で、順当に処理能力をアップさせている。

世界初となる5nmプロセスで設計されたA14 Bionicには、処理速度が前世代から50%高速化された6コアのCPUや、グラフィック性能を50%向上したGPU、毎秒11兆回の計算が可能な16コアのAI処理用チップが含まれている。

 

5G対応を含め、iPhone 12シリーズは順当な進化を遂げている。大きな変化はボディのデザインで、iPhone 8以来の丸みを帯びた形状から、iPhone 5や初代iPhone SEのような角張った形状へと回帰している。これはボディのサイズを縮めるためで、画面の大型化にともなって、ベゼル(画面の枠)の幅も細めている。なお、iPhoneの特徴的な長いノッチ(画面上部の出っ張り)はそのまま継承している。

ディスプレイは狭額縁化にともない、「Super Retina XDディスプレイ」と呼ぶ新型に更新された。コントラスト比や画素密度を高めた上で、iPhoneとして初めてHDR規格の動画の再生に対応した。Dolby Vision、HDR 10、HLGというメジャーなHDR動画規格を網羅している。

HDR動画を撮影から編集まで1台で完結

カメラは主に暗所性能を向上させている。光学的なレンズ設計などは順当に性能を向上させた。iPhone 12シリーズな背面のメインカメラとなる広角カメラは7枚構成のレンズを採用し、取り込める光の量を増やしている。

加えて、パワフルなコンピューティング能力を生かした新機能を採り入れている。たとえば、「スマートHDR3」と呼ばれる撮影機能では、写真を解析してホワイトバランスや露出などをパーツごとに自動で調整する。薄暗い場所での撮影性能を引き上げるDeep Fusionは、新モデルからインカメラでも適用できるようになった。

動画撮影の目玉機能は、「Dolby Vision規格のHDR動画の撮影」に対応したことだ。Dolby Visionの動画フォーマットは映画の世界ではお馴染みだが、スマートフォンで撮影・編集という類例は存在しない。iPhoneは世界で初めて「Dolby Vision動画の撮影、編集、視聴、シェアが1台で完結するスマホ」となったという。