VR人狼ゲームを皮切りに、今後キャラクターバンクではVRならではのコミュニケーションを活かしたゲームを複数手がけていく計画。そのための軍資金として既存投資家のTHE SEEDのほか、マネックスベンチャーズや個人投資家1名から総額1億円を調達した。

VRはコミュニケーションの可能性や楽しさを拡張する

CharacterBankのメンバー。中央が代表取締役を務める三上航人氏
CharacterBankのメンバー。中央が代表取締役を務める三上航人氏

なぜ「VRゲーム」領域で事業を立ち上げたのか。三上氏はその背景について「ゲーム開発をしたい、VRで何かを作りたいというよりは『コミュニケーションって面白い』という考えが根本にあって、その体験を拡張する技術としてVRに関心を持ちました」と説明する。

中学生ごろまでの自身を「ファッション的な意味でのコミュ障ではなく本当のコミュ障で、人と接すること自体が苦手だった」と振り返る三上氏。不登校を経験したこともあったが、高校では興味のあったロボット開発系の学科がある工業高校に進み、気の合う仲間もできたことでコミュニケーションに対しても徐々にポジティブになっていった。

コミュニケーションへの関心が高まるきっかけとなったのが、学生時代に関わっていたクリエイティブ企業での仕事だ。三上氏は1人のエンジニアとしてパーソナルロボット「Pepper」の会話開発や、TOYOTAのコンセプトカー開発のプロジェクトに参加した。

人が身近に感じるような会話をいかに設計し、プログラムに落とし込んでいくか──。特にPepperの案件では1つ1つの会話やコミュニケーションについて何度も考え、実装し続ける日々を過ごした。そんなこともあって、自然と「ゆくゆくはコミュニケーションの体験を豊かにするようなサービスを自分で開発してみたい」と考えるようになったという。

その手段としてVRを選んだのは市場の成長性もあるが、何よりも自身の体験が大きい。海外のVRコミュニケーションアプリを触ってみた時、英語が話せないにも関わらず、ジェスチャーを通じてオンライン上で海外の人とコミュニケーションを楽しむことができた。

「ものすごく現実に近くておもしろいと衝撃を受けたのを覚えています。仮に音声通話やビデオ通話だったとしたら、自分は絶対にコミュニケーションが取れなかった。ノンバーバル(非言語)なコミュニケーションができるVRの体験に興味が湧きました」(三上氏)

三上氏は前職のスタートアップを離れた後、2019年3月にCharacterBankを立ち上げた
三上氏は前職のスタートアップを離れた後、2019年2月にCharacterBankを立ち上げた

すでに存在するデバイスや技術を使っていかにコミュニケーションを拡張できるかを模索した時、VRに大きな可能性を感じた。ゲームから始めたのは、その体験をいろんな人が試しやすいからだ。