Tsunagu.AIが目指したのは「複数のモデルを組み合わせた『デザインを理解するAI』」を開発することで、この工程を大幅にアップデートすることだ。

FRONT-END.AIの仕組み。従来は人が担っていた「デザインの理解」をAI化しているのがポイント
FRONT-END.AIの仕組み。従来は人が担っていた「デザインの理解」をAI化しているのがポイント

特徴は画像認識精度とテキスト情報の認識精度の高さ。たとえばある背景の上に他の画像が表示されているような場合、人間が見ればすぐにわかるものでも、機械的に正しく判別するのが難しかったそう。かといって(背景と他の画像を判定する処理の)閾値を下げるようなことをすれば、今度は誤検出が発生してしまい現場では使えなくなってしまう。

Tsunagu.AIでは画像の特徴を掴む技術を自社で開発することで、背景とその上にある画像をきちんと判別し、業務内でストレスなく使えるレベルのプロダクトを実現。テキストの判別に関しても手書き文字を認識するために開発されたAI(AI-OCRエンジン)を、デジタル文字を判別することに特化したAIとして再学習させることで精度を高めてきた。

「たとえば先日2万ピクセルの非常に長いランディングページをコーディングしたのですが、通常の方法だとHTMLを作るだけでも2〜3時間かかってしまっていました。それがFRONT-END.AIを活用すれば(微修正も含めて)20〜30分ほどに短縮されるようになります」(森氏)

データを活用することで人の働き方を変えられる

Tsunagu.AIのメンバー。中央が代表取締役兼CEOを務める森隆晃氏
Tsunagu.AIのメンバー。中央が代表取締役兼CEOを務める森隆晃氏

森氏は新卒で入社したメンバーズで新規事業やウェブサービスの構築・運用支援などを経験。独立後はグッドパッチにジョインしてUXデザイン支援業務などにも携わった。

起業自体は学生時代の頃から考えていたそうだが、FRONT-END.AIのアイデアに関してはメンバーズ時代の原体験が大きく影響しているという。

「新規事業としてリスティング広告を自動で最適化するツールの開発・運営に携わる機会がありました。今ではアドテクノロジーが進歩して自動化やデータ活用も進んでいますが、当時は現場の担当者が夜遅くまで手作業でやっていた業務も多かったんです。でも最適化ツールが完成すると、実際にメンバーが早く帰れるようになった。その様子を見ていて『データを活用することで人の働き方を変えられる』と強く感じました」(森氏)

それから数年後にはディープラーニングが話題になり始め、森氏はこの技術で世界が変わるなと考えるようになった。それが過去の実体験やウェブ制作の現場における課題などとも結びつき、FRONT-END.AIのアイデアに行き着いたのだという。

実際にプロダクト開発を進め、プロトタイプが完成したタイミングでクローズドベータ版の利用企業を募ったところ最終的には1100名(企業と個人を含む)から申し込みがあった。