まずはその中の一部の企業に実際に使ってもらいながら検証やプロダクトの改善を継続。中でも相性が良かったWeb制作会社や広告代理店を初期のターゲットに定め、現在はアカウント数に応じた月額制のサービスとして約30社に有償で提供している。

「いろいろな技術が発展しているにも関わらず、人がデザインを理解して構造化していく作業は何も変わっていないという課題感は各社に共通するものです。特に現場でキーワードになるのは『(単純作業の)工数をいかに減らしていくか』。新しい技術が生まれ、やること自体は増えているのに単価は依然とあまり変わらない。増えた業務は残業でカバーするか、とにかく納期厳守でエンジニアにとって不完全燃焼な形であったとしても区切りをいれるかしかありません。そういった状況が続けば現場が疲弊するだけでなく、離職や満足度の低下にもつながってしまいます」(森氏)

単純作業を減らし、エンジニアの成長機会を創出

各社で違いはあれど、FRONT-END.AIの導入企業はだいたい開発工数を5割ほど削減することに成功している企業が多いそう。開発にかかる時間が半分に短縮されれば、現場のエンジニアは残りの時間をより“クリエイティブなコーディング作業”に費やすことも、自身の技術力を高めるために投資をすることもできる。

現場のコスト削減や工数削減はわかりやすいメリットだが、森氏としてはエンジニアのキャリアアップを支援したいという気持ちも強い。

「これまで若手のエンジニアをたくさん採用して、さまざまな案件にアサインしてきました。たとえば3年経ったタイミングでエンジニアとしての成長度を見ると、やはり人それぞれで大きく異なります。1つの要因として自己研鑽の時間をあまり取れなかった人は、どうしても技術を磨けていないことが多かった。エンジニアの負担になっている単純作業を減らすことで、彼らや彼女らが時間の使い方を変えられるようにサポートできればと考えています」(森氏)

今回調達した資金は主に機械学習エンジニアやカスタマーサクセス担当者など組織体制の強化に用いる計画。さらなる機能拡充を進めるほか、コアとなるデザインの分析技術を磨き、ゆくゆくはCMSへの対応などにも取り組む予定だ。

「近年はテンプレートなどを活用しながらWeb開発のハードルを下げるノーコードツールも登場してきています。これはもちろん素晴らしい技術ですが、大手企業のブランドサイトなどを中心にデザイナーが作ったオリジナルデザインをコード化するような技術はまだなく、ほとんどが手作業によって成り立っているのが現状です。FRONT-END.AIでもまずはその作業をローコードサービスとしてしっかり支援しつつ、中長期的にはノーコードツールがより広がっていくと思うので、その際に上手く繋ぎこめるようにサポートできる仕組みも検討していく方針です」(森氏)