・「ティアムーン帝国物語」(TOブックス)

・「対ありでした。」(KADOKAWA)

変わり種としては、「ティアムーン帝国物語」もよかったです。いわゆるなろう系小説が原作ですが、帝国で革命がおき、皇女のミーアがギロチンされるところから話がスタート、そのまま数年前の自分に戻るのですが、このままいくとギロチンになることがわかっているので、その未来を必死に変えようとする話です。ものすごい才能を感じたマンガでいうと「対ありでした。」もよかったです。お嬢様学校で対戦ゲームをするマンガなのですが、コマ割りや台詞などにすごいセンスを感じます。

・「天帝少年」(KADOKAWA)

・「やせましょう」(講談社)

短編マンガでいうと、「天帝少年」はよかったです。こういう良質な短編マンガは作者の物語を構成する能力が問われると思いますが、非常によかったです。ドキュメンタリーマンガとしては「やせましょう」はさすがのおもしろさでした。料理漫画を書かせたら国内トップクラスの小林銅蟲先生がダイエットをするという切り口だけで最高なのですが、いろいろなダイエットを試す姿がおもしろいし興味深いです。

・「望郷太郎」(講談社)

・「宙に参る」(リイド社)

・「乙女怪獣キャラメリゼ」(KADOKAWA)

DIAMOND SIGNALなどを見る読者にオススメしたいマンガとしては「望郷太郎」があります。世界的な氷河期で人類がほぼ滅亡した世界で、コールドスリープで起きた主人公が、イラクから日本に戻ろうとする話です。全体的に寂しい、哀愁のようなものが広がる作風なのですが、迫力あるシーンの描写と、静かなシーンの描写がそれぞれものすごいんです。

SF系でいうと「宙に参る」は相当の秀作だと感じています。宇宙が舞台ですが、世界観を語りすぎなくてもここまで入り込めるんだ、というので、とても良質な作品でした。少女漫画といっていいかわかりませんが、「乙女怪獣キャラメリゼ」もよかったです。大怪獣に返信してしまう女子高校生のクロエが主人公ですが、乙女の恋の話と、その主人公が大怪獣に返信してしまうというミスマッチが、ものすごいおもしろいです。ぜひ読んでみてください。あと1万文字くらい書けそうなのですが、このくらいにしておきます。

ANDART代表取締役社長 松園詩織氏

・「ミノタウロスの皿」(小学館)

・「気軽に殺ろうよ」(小学館)

・「箱舟はいっぱい」(小学館)

大好きな作家、藤子・F・不二雄の「ミノタウロスの皿」「気軽に殺ろうよ」「箱舟はいっぱい」などのSF“異色短編集”シリーズ。2020年は世界において混沌と、価値観や暮らしのアップデートが起きた年かと思いますが、自分の中の常識や安心はあっという間に崩れ「まさか」と思っていたような事態を実体験した今、ここで描かれる非現実なパラレルワールドとそれを取り巻く登場人物たちのストーリーが妙に突き刺さりました。古いもので50年近く前に世に出されたとは思えない、狂気の短編集です。