NTT帝国の奇襲#1Photo:Bloomberg/gettyimages

NTTがNTTドコモを完全子会社化してから3年。グループの総力を結集してドコモの価値最大化を目指した「大再編」だったはずが、その狙いに狂いが生じている。ダイヤモンド編集部の取材により、ドコモが携帯電話契約の顧客争奪戦で、KDDIとソフトバンクの2社に“完敗”している実態が明らかになった。特集『NTT帝国の奇襲』の♯1では、ドコモ内部に起きている異変に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

店舗閉鎖を強行中のドコモ
突如「ショップ重視」を打ち出した理由

「ドコモショップの来店客数を増やして契約の増加につなげていく」――。

 9月19日に開かれたNTTドコモの下期営業方針説明会。全国の2000店余りの代理店の全てが参加する重要な会合で、営業担当役員の田村穂積副社長を始め経営幹部から示された「来店客を増やす」という方針は、携帯電話ビジネスの営業会議として当たり前のことを言っているように聞こえる。

 だが、説明会に参加した代理店幹部の受け止めは違った。「前回までの営業方針説明会では店舗の数を減らそうという話ばかり。ここでショップを重視して来店客を増やすという方針は大きな転換だ。これで店舗の削減をやめるということになればいい」。

 ドコモのショップ閉鎖は全国の代理店の経営者を悩ませてきた深刻な問題だ。井伊基之社長は2022年度から25年度までに全国店舗の約3割に相当する約700店舗を削減する計画を実行している。

 22年3月末に2307店舗あったドコモショップは23年3月末に2179店舗まで減った。実に1年で128店舗もの削減だ。さらに23年11月1日時点では、3月末から7カ月で82店舗減って2097店舗になった。ハイペースの店舗閉鎖を続けながら突如として「ショップ重視」という、ちぐはぐな方針をドコモ本社が打ち出した背景には、ドコモに突き付けられた“深刻な実情”があった。

 それは、ドコモの携帯電話契約が他社に流出を続けていることだ。次ページでは、ドコモがKDDI、ソフトバンクとの顧客争奪戦で完敗している「実態」をダイヤモンド編集部が取得した内部データを使って明らかにする。その上で、井伊社長が強行してきた店舗閉鎖施策により、ドコモ内部が大混乱を来している実情に迫る。