取材当日に“マスク着用必須”の面接に参加したばかりだというマスコミ業界志望の男子大学生は、「面接も説明会も、ほとんどが対応待ちの状態。面接の日程を入力した直後に、ウェブ面接に切り替わり日程が再調整になることもある」と説明した。
さらにTOEICを受験する予定だった学生は「事前に申し込んでいたが、中止になってしまった。5月以降に振り替えになると連絡がきたが、就職活動のために3月に受験しかたかったので、困っている」と不安な様子だ。
一方で、現状はあまり影響を感じていない学生もいる。ITソフトウェア業界志望の男子大学生は「中止を想定して多めに説明会を申し込んでおり、半数ほどは通常通り実施しているため、私自身今のところは大きな影響はない。志望業界を絞っていた友人は困っていたので、就活スタイルによるかもしれません」と語る。
完全ウェブ面接に切り替える企業も
企業側も、急な対策に迫られている。マーケティングのクラウドサービスを提供するベーシックは2月17日、これまでオフィスで面接を実施していたところを、原則ウェブ面接に切り替えた。21日からは、従業員のフルリモートも実施している。
企業担当者アンケート回答結果「どういった対策を検討したり、実行されていますか?」 提供:スタジアム・ジェイック共同調査 拡大画像表示
ベーシックの人事マネージャーである今村龍平氏は、「今のところ大きな課題感は感じていない」と説明する。
「言語によるコミュニケーションは問題なくできるのであまり支障はありません。ただ、雰囲気や立ち振る舞いなど、対面でないとわからない情報もあるため、最終面接のみ対面で実施しています」(今村氏)
ベーシックは17日以前から、マスク着用や出社時間をずらすなど、従業員に対して感染予防策を講じていたが、社外の人への施策は実施していなかった。
採用をウェブに振り切った一番の背景は、Twitterでの就活生のツイートでした。面接に行く不安を呟いていたのを見て、採用活動もお互いにリスクがある行為だなと感じ、ウェブ面接に移行しました」(今村氏)
採用に「コロナの影響出ている」と答えた企業が10倍に
ベーシックのように、採用をウェブ面接に切り替えようとする企業は急増している。ウェブ面接ツール「インタビューメーカー」を提供するスタジアムが企業1万1764社を対象に実施した調査によれば、2月8日時点と3月3日時点で、企業の採用活動におけるコロナウイルスの影響が大きく変化していることがわかった。
2月8日時点で「新型コロナウイルスの影響出ている」と回答したのは6%なのに対し、3月3日時点では60%と、約10倍に増えている。さらに2月8日時点では「今後も影響は出ないと思う」と答えたのが約半数の48%もいたことから、企業側も数週間前まで楽観視していたことがわかる。現在まさに、“想定外”の対策に追われている状況なのだ。