そこで奏功したのがOCR機能だ。飲食店側がデジタル化を受け入れなければ、その店舗には無理にクロスオーダーを勧めず、これまでどおりFAXで発注してもらえばいい。FAXでの注文データも、OCR機能によってデジタル化できるので、卸売業者はクロスオーダーだけで管理できるからだ。
卸売業者による受注業務のDXが難しいのは、それに関わる企業双方がデジタル化を受け入れなければならない点にある。しかし、クロスオーダーはユーザーの取引先である飲食店を「取り込まない」ままでデジタル化を実現した。
卸売業者が本質的な業務に集中できるように
当初はクロスマートを導入した企業に対してクロスオーダーを紹介する狙いがあったが、寺田氏は、「クロスオーダーの成約が好調なことで、これからは逆の流れも起こりうる」と言う。例えば、クロスオーダーで経費を削減した卸売店が、浮いた経路で新たな販路を開拓するためにクロスマートを利用する、といったケースだ。
より飲食店業界の受発注のデジタル化を進めるため、今後は電話音声の文字起こしサービスの導入も検討しているという。FAXはデジタル化したものの、いまだ発注の約2割は電話(主に留守番電話)が占めている。こちらもデジタル化できるようにするためだ。より長期的な展望として彼らが目指しているのは、卸売店と飲食店の取引で起こりうるあらゆる「面倒」をなくすことだ。
「クロスオーダーで発注から決済までを一貫でこなせるようになれば、払い忘れや未払いもなくせるはず。さらに、定期的な注文の自動化なども連携できれば、機械的な受発注にかける時間はより減ります。日本の飲食店が全世界の中でも高い水準を誇っているのは、卸売業者という屋台骨のおかげだと思っています。彼らが目利きという本質的な作業に時間をかけることができ、よりスポットライトが当たるようになればいい」(寺田氏)