「注文住宅の営業担当者として建て替えを希望する顧客に接する中、『ハウスメーカーを介さず業者に直接依頼することで解体工事のコストを下げたい』との声が多かった。だがほとんどの顧客は解決策を知らない。自身では解体業者を探せず、適正金額もわからない。これはサービスにすればニーズがあるのではないかと思った」(川口氏)
総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国には846万戸ほどの空き家が存在する。これは全住宅の13.55パーセントを占める。空き家の増加や建物の老朽化が社会問題となる中、解体工事の規模は年率で7パーセント増している。
ニーズが大きい一方、アナログな業界にデジタルを持ち込む「変革者」として足を踏み入れることは「困難の連続だった」と川口氏は言う。
“あいまい”だった「優良解体工事会社」の定義
くらそうねのリリース以前、住宅の解体工事を希望する施主は「サーチエンジンで検索」、もしくは「知人に聞く」ことぐらいしか業者を探す術はなかった。一括見積もりサイトも複数存在していたが、施主の頭には「多くの営業電話がかかってくるのではないか」と不安がよぎる。「優良な会社を紹介します」といった類のうたい文句も信用し難い。
「優良の定義が非常に定性的だった」と川口氏は述べる。
「優良な業者か、適正な金額かの判断が難しいと、無駄に時間を割いてしまう。会ってみて初めてどのような会社かがわかり、見積もりをお願いし初めて金額がわかる、というのがこれまでの顧客体験だった」(川口氏)
優良の定義は施主が判断するべきだ。そこで、くらそうねでは工事会社に関する口コミや、対応マナー、追加費用、工事品質、工期遵守、近隣配慮の5項目を確認できるようにした。加えて従来は見積もり金額を取得するまでに20日ほどを要していたが、くらそうねではAIを取り入れ最短1分でおおよその金額を提示する。川口氏の説明によると、現時点で予想金額と実際の金額には「物件にもよるが」2割ほどのブレが生じている。今後はデータを蓄積し精度を高めていく。
懸念される反社会的勢力との関わり
解体工事業者のイメージは決して良いものではない。古くから「解体業界と暴力団との付き合いは根深い」と言われているからだ。
暴力団の多くは、表向きの事業として解体工事を行い、活動資金を確保してきた。不法投棄によって解体費用の半分近くを占める処分費用を削り、不法労働者の採用によって低い人件費での工事を進め、不当な利益を得てきたと言われている。