「建設業界は基本的に労働集約型だ。施主からの依頼を待ち、工事を受けるため、季節によって波がある。大きな建設業者であっても、波がへこんだ時に仕事がなくなってしまうため、多くの従業員を抱えることはできない。そのため、最低限の人数を抱え、需要が跳ねた際に足りなくなった人手は『極力下請けでまかなう』といった風潮がある」(川口氏)

 多重下請け構造では、最下部にいる業者は上から降りてくる仕事を引き受けるほかなかった。そこで、くらそうねでは、あらゆる規模の工事会社をプラットフォーム上に登録し、小規模の事業者でも顧客と直接繋がれるようにした。

「多重下請け構造は生産性が非常に悪い。情報を整備し、全企業が現場で活躍できるようにすれば生産性は上がる。人手不足問題の原因も生産性の低さにある。人がいないのではなく、人が来たくなるような給料が支払えない。我々が構造を改革し生産性を高めることで、豊かに働ける業界にしていきたい」(川口氏)

 事業者は一括見積もりサービスなどに登録することで、多重下請け構造とは別のルートで仕事を受けられていたのではないか。そうと聞くと、川口氏は「これまでプラットフォーマーは情報格差を利用した営業形態をとっていた」と反省を述べた。

「『我々のサービスを利用すれば優良な会社を紹介する』といった具合にクローズドな運営をしてきた。そのため優れた会社の情報が表に出ていない。これはマッチングサービスの責任でもある。だからこそ、くらそうねではできるだけ情報を表に出そうとしている」(川口氏)

 くらそうね上では、各企業の担当者の顔写真がアイコンとして使われていたり、社屋や工事の作業風景、重機車両などの写真が掲載されている。どのような作業員が所属しているのかを「見える化」しているのだ。情報を透明化することで顧客に安心感を与え、解体工事会社の持つ悪いイメージを払拭しようと試みている。

 そして多くの工事会社は「アナログ」だ。ホームページを持ち自分たちで情報を発信するのは得意ではない。そのため、くらそうねでは写真撮影やプロフィール文の作成に関しても支援を行っている。

需要が落ちても空き家は減らない「アフターコロナ」に備えて

 クラッソーネは2019年8月にくらそうねのベータ版をリリースした。愛知県限定でサービスを提供し、当時の登録社数は60社程度だった。そして本年4月1日、全国展開とともに正式版を発表した。現在の登録会社数は800社ほど。利用者数は開示されていないが、年内には月間で2000人の施主に利用されることを目指す。