そこで、くらそうねでは、東京商工リサーチとエス・ピー・ネットワークが提供するデータベース、内部のデータベース、そして環境省が提供する「過去に違反行為を行った会社のリスト」を活用し、反社会的勢力のチェックを行っている。

 解体工事の許可を持つ業者は5万社以上。だが、専業ではなかったり、事業を行わず、単に許可を持っているだけの業者も多いため、実態としては1万社ほどの解体工事会社が存在するとクラッソーネは見ている。同社が審査した工事会社のうち、約1から2パーセントの業者が「反社面」が原因で登録からはじかれている。

 川口氏も危機的な状況を身をもって経験してきた。だからこそ登録業社のスクリーニングは徹底して行なっている。

 ある工事会社と顧客の対応を巡り口論になった際には「手を回して、あなた達が事業を行えないようにしてあげますよ」と脅された。

 虚偽の許可証を提出されたこともあった。行政に確認を求めたところ「そんな許可番号は存在しません。恐らくその許可証は偽造されています。どこで手に入れましたか?」といった具合に、クラッソーネ自体も反社会的勢力なのではないかと疑われてしまった。

 だが川口氏は「トラブルが起きたのはほんの数度。ほとんどの会社は『誰もやらないこと』を黙々とこなす真面目な人たちだ」と言う。

「古い建物を解体しなければ新しい建物は建たない。建物を建て替える中で、一番地味で何も残らない作業だ。危険で怪我をする可能性も高い。『新しい建物を建てるためのキャンバスを作る』『自分たちが業界のイメージを良くしていきたい』と言う素朴なおじさんが多い。その人たちが情報格差が原因で埋もれてしまうのはもったいない。エンドユーザーに満足していただくのは当然のこと、その過程で工事会社も豊かにして行くことは大事だと思っている」(川口氏)

業界が抱える最大の課題は「多重下請け構造」

 クラッソーネが目指すのは、施主の課題を解決するだけではない。工事会社が持つ悪いイメージを払拭し、テクノロジーを駆使し業界構造に変革をもたらすことで、優良な事業者を「利益体質」にすることも目標の1つだ。

「くらそうねでは、施主とのマッチングの場を提供するだけではなく、利益の出る体質にするため、手助けをする。それを業界全体に実施することによって、業界としての生産性が上がっていく」(川口氏)

 解体工事業界は多重下請け構造になっている。頂点にいるのがゼネコンやハウスメーカー。その下にはサブコン。そこに大規模、小規模の順番で解体工事会社がぶら下がっている。「労働力の平準化」を図る上でこの構造が生まれてしまったのだと川口氏は説明する。