もちろん受託にも質があります。売り上げなり、ノウハウなり、アセットなりがストックされていくものでなければいけません。それでビジネスへの入り方を間違えなければ、大きくスケールします。世の中的には「受託はカッコ悪い」と言われます。ですが、小さいときにはクライアントワークでも成長するので資本効率的には悪くないんです。そこも含めて、考え方をフラットにしないといけません。僕らも現在進行形でトライしているところです。これが正解だったと証明していきたいと思っています。

原理原則はあっても、「自分で考える」ことが大事

 これからの起業家の皆さんには、「とにかく自分で考えよう」と伝えたいです。起業家というのは、ないものづくしな中でジャイアントキリング(格上を倒す番狂わせのこと。ここではスタートアップが大企業を超えることを指す)を起こさないといけません。

 今は、僕が起業した頃よりもまわりにアドバイスをしてくれる人もいるし、書籍も含めて、情報量が増えています。そこから学ぶ「原理原則」はあるんですが、そういうものはツールでしかありません。結局ジャイアントキリングを起こすには、その人しか見つけていない型であったり、考え方が必要です。瞬間瞬間、自分の組織に合った意志決定が求められるんです。

 組織個別性の「正しさ」しか、スタートアップが大企業に勝つ道はありませんから。常識が勝つ世界、定理で勝つ世界というのは、すなわち大企業が勝つ世界なんです。スタートアップは失敗する。一度失敗するからこそ、リカバリして勝つ。それがスタートアップの真理です。僕はこれからもたくさんの失敗をするでしょう。でもそこで諦めずに、立ち上がります。そうやっていくのが真の起業家なんだと思います。

福島良典(ふくしま・よしのり)
LayerX代表取締役社長
東京大学大学院工学系研究科卒。大学時代の専攻はコンピュータサイエンス、機械学習。 2012年大学院在学中にGunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で東証マザーズに上場。後に東証一部に市場変更。 2018年にLayerXの代表取締役社長に就任。 2012年度IPA未踏スーパークリエータ認定。2016年Forbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出。2017年言語処理学会で論文賞受賞(共著)。2019年6月、日本ブロックチェーン協会(JBA)理事に就任。