日本が抱える「医師不足」問題
また、病床が空いていても医師や看護師が足りないために患者を断らざるを得ないというケースも、アクセスと質が同時に成り立たないトレードオフの関係が招く事態の1つ。
その背景には、諸外国と比べて「人口当たりの医師数が少ない」という現状があります。
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OECDの調査によると、2018年の日本の人口1000人当たりの現役医師の数は、2.5人。これはOECD加盟国の中で7番目に低い数字です。
そもそも医師数が少ないうえに、その医師があちこちに分散してしまっているため、必要なときに必要な場所で必要とされる医師の数が確保できない。
つまり、「医療の質」が確保できないという事態が起こり得るわけです。
こうした課題が如実に明らかになったのが、今回の新型コロナウイルス感染拡大です。
日本ではこのコロナ禍で病床が逼迫し、医療崩壊の危機が日々報道されていました。世界一多い病床数を誇る日本で、なぜ病床が逼迫するのか──。
答えは、医療資源(医療従事者)が確保できないから。逼迫していたのは病床ではなく、医療従事者だったということです。
病院病床数が多すぎて、医療資源が“あちこちに少しずつ”分散しているため、患者が急増しても、医療従事者たちは常に少人数でやりくりしながら対応せざるを得ません。
そうした現場の状況では、患者の受け入れに限界が出てきても仕方のないことでしょう。
医療従事者たちがわが身を犠牲にする思いで必死に頑張っているにもかかわらず「病床逼迫、医療崩壊」という状況が生まれてしまった──。
コロナ禍のそんな背景には病床数と医療の質のトレードオフ、つまり「ベッドは余っている。なのに、対応する医師がいない」という日本の医療体制の現状があったとも言えるのです。