なぜ警察は周庭さんのパスポートを
3年も押収し続けられたのか

 もう一つの疑問は、「なぜ警察は周庭さんのパスポートをこれほど長期にわたって押収し続けることができたのか?」という点だ。

 というのも、国家安全法ではパスポートの押収について、「国家の安全を損ねる犯罪行為を犯したと疑われる者に対して、旅行用身分証明書の提出あるいはその香港からの出立を制限することができる」と規定しており、法的根拠となっている。その期間は6カ月と記され、さらに3カ月の延長が可能とされているが、周庭さんの場合、20年8月末に逮捕されて以来ずっと押収されたままだった。

 周さんによると、彼女は3カ月ごとに1回警察に出頭しては、その延長のための書類にサインさせられたという。周さんは捜査がいったいいつまで続くのかも分からないまま、逆に毎回の出頭のたびに突然保釈が中止されてその場で逮捕されるのではないかと不安でならなかったと述べている。国家安全法には、その捜査の期間も、また保釈期間についても上限の規定がなく(専門家によると、中国国内の法律では一応上限規定があるらしい)、ずるずる続く行動規制に、すっかり精神が参ってしまったと明らかにしている。

 もちろん、というか、予想に違わず、というか、香港政府も香港警察も、巷(ちまた)で論じられているこうした疑問を無視し続けている。いや、そればかりか、周さんが「香港に戻らない」と宣言した直後に見せたあいまいな態度、そしてメディアからの質問に正面切ってその判断の正当性を論じようとしない姿から、「もしかしたら、李家超行政長官も、トウ炳強(「トウ」は「登」におおざと)保安局長も、周さんがカナダに留学したこと自体を知らなかったのではないか」とする推測も起きている。

 となると、周さんの出国申請に関わる一連の判断を行ったのは、いったい誰なのか?