もしかしたら、答えは簡単かもしれない。というのも、こうした政治犯に対する「旅行」と呼ぶ教育プログラムや、そして悔悟書や感謝状などの執筆やそれを大声で読み上げさせるという、香港では前述のタン弁護士ですら「聞いたこともない」というやり方は、実は中国では日常茶飯事となっているからだ。
つまり、周さんに深センを見せ、中国の「偉大な発展」を説き、その繁栄ぶりを見せつければ、彼女もきっと納得して中国を受け入れるはず――と考えたのは、香港を担当する、中国政府を背景に持つ人物だったのではないか。その人物が、「この年若い娘を海外留学させても、きっと3カ月後に戻ってきておとなしく警察署に出頭するはずだ」と考え、彼女を送り出したのでは……?
もちろん、これはただの臆測である。だが、間違いなく言えるのは、その決定権を持つ人物は中国の政治犯に対する対応手法には大変詳しい一方で、周庭さんという人物のことや、また香港の法律慣例については、何も理解していないということだ。
つまり、周庭さんの再出現が人々にもたらしたのは、彼女の近況のみばかりでなく、そんな人物がいまや香港において、行政長官も知らぬ間に警察すら自由に動かせるという現実だった。この点において、彼女の告白は香港にとって別の意味を持つ「大事件」となっている。
そして、香港警察は15日、周さんがもし予定通り12月末に香港警察に出頭しない場合、「現時点では犯罪者ではない」彼女は「正式に逃亡犯とみなされ、指名手配も辞さない」と述べた。