「ヒット作を生み出したい」とは、ビジネスパーソンなら誰もが夢見ることだ。日本中の人がその商品の名前を知っている「メガヒット」ならなおさらよい。「綾鷹」「檸檬堂」「からだすこやか茶W」「SK-Ⅱ」「ファブリーズ」「ジョイ」…これらの商品は、ほとんどの日本人が知っているメガヒット商品だ。これらの商品を大ヒットに導いたのは、P&Gジャパン、日本コカ・コーラを渡り歩いた伝説のマーケター・和佐高志氏である。彼の初の著書『メガヒットが連発する 殻を破る思考法』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して、ヒット作を生み出すコツを学ぶ。

先輩から学んだご縁は、後輩にしか返せないPhoto: Adobe Stock

誰かが成功するために光を照らす

 日本コカ・コーラ時代、世界から30人の若手幹部が呼ばれ、6週間、寝食をともにしていろんなトレーニングを受けるというブートキャンプに呼ばれたことがありました。そして最終日、こう言われました。

「6週間を通じて、自分が見つけた、これからの指針になるような言葉を、1人5分ずつでプレゼンテーションしてください」
 私が発表したのは、「Passion Counts」でした。やはり最後はパッション。そんな思いからだったのですが、同僚が、こんな言葉を語ったのでした。

「Give Light for Others to Succeed」

 誰かが成功するために光を照らす。

 私は当時49歳でしたが、大半のメンバーが30代だった中で、彼も私と同年代でした。仲間からは、私たちはおじさんグループと呼ばれていたのですが、私は彼のこの言葉に強く惹かれました。自分がこれからすべきことを、もっともよく表していると思ったからです。

 私はP&Gジャパン、日本コカ・コーラという2つの外資系企業で30年間、いろんな幸運に恵まれて、たくさんのことを達成することができました。マーケターとしては、ありがたいことに成功していると周囲からは思われているようです。

 実際には大変なこともたくさんあったわけですが、本当に楽しく、ありがたい仕事とキャリアを積むことができました。そしてあらためて思ったことは、先輩から学んだご恩は、後輩にしか返せないということでした。

 だからこそ、この言葉は響きました。そしてこの言葉が、私の次のキャリアをも切り拓いてくれたのでした。

先輩から学んだご縁は、後輩にしか返せない

和佐高志(わさたかし)1990年、同志社大学文学部新聞学科卒業後、P&Gジャパン・マーケティング本部入社。医薬品、紙製品のマーケティングに始まり、化粧品&スキンケア、洗濯関連カテゴリー等を担当。ブランドと人材育成の実績を重ね、ブランドマネジャーからマーケティングディレクターへ。2006年、紙製品、化粧品&スキンケア事業部担当のジェネラルマネジャーとして、P&Lの責任を持つ。2009年より、日本コカ・コーラのお茶カテゴリーマーケティング責任者。「太陽のマテ茶」や「からだすこやか茶W」などの新製品発売および「綾鷹」ブランドの立て直しなどによるお茶カテゴリーV字回復を実現。2013年、同社副社長に就任し、「ジョージア ヨーロピアン」「世界は誰かの仕事でできている。」キャンペーンなど複数の大型ブランドのビジネス拡大推進をリード。2019年にコカ・コーラ社世界初となるアルコールブランド「檸檬堂」の開発責任者として成功を収め、最高マーケティング責任者に就任。2020年、日経クロストレンドが選出する、マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞受賞。2023年、同社を退社。株式会社Jukebox Dreams(ジュークボックスドリームズ)を設立、同社代表取締役CEO就任。