「ヒット作を生み出したい」とは、ビジネスパーソンなら誰もが夢見ることだ。日本中の人がその商品の名前を知っている「メガヒット」ならなおさらよい。「綾鷹」「檸檬堂」「からだすこやか茶W」「SK-Ⅱ」「ファブリーズ」「ジョイ」…これらの商品は、ほとんどの日本人が知っているメガヒット商品だ。これらの商品を大ヒットに導いたのは、P&Gジャパン、日本コカ・コーラを渡り歩いた伝説のマーケター・和佐高志氏である。彼の初の著書『メガヒットが連発する 殻を破る思考法』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して、ヒット作を生み出すコツを学ぶ。
フォロワーが付いてきてくれるリーダーになろう
リーダーになるとき、どんなリーダーになるべきか。目指すべきは、インスピレーショナル(心を動かす)・リーダーだと思います。簡単なことではありませんが、フォロワーが付いてきてくれるリーダーでなければならないということです。
それこそリーダーになったとき、後ろを振り向いて「私がリーダーだから」と言っても、誰も付いてきてくれなければ、リーダーにはなりえません。
では、どうすれば、人は付いてくるか。パッション・情熱を持って、自分が一番頑張っているかどうか。それが、スタートポイントです。パッション・情熱を持っていないリーダーの下では働きたくないでしょう。
P&Gには、「5E」という言葉があります。「Envision」「Engage」「Enable」「Energize」「Execute」。日本語にすれば、ビジョンを描く、巻き込む、やる気を出させる、パフォーマンスを向上させる、成果につなげる。
組織のポジションによってマネジメントしようとすることを、「ポジションパワー」と呼びます。これでは真のリーダーシップは生まれません。リーダーシップとは、ポジションパワーではないのです。 必要なのは、「インフルエンシャル(影響を与える)・スキル」です。ポジションに関係なく、「この人の言っていることには一理ある」「この人の言っていることは面白いので一緒にやってみたい」「この人と話しているとワクワクする」と思ってもらえるかどうか、なのです。
「チャレンジではあるけれど、これが成功したら大きな可能性がありそうだ」と思わせられるか。鼓舞し、影響を与えられるリーダーこそが、真のリーダーです。もちろん簡単にはできない。だからこそ、どうやってなろうか、と考える。そのスキルを意識する。
何か新しいことをやろうとするとき、大きな組織であれば「そんなの成功する?」「失敗したら誰が責任を取るの?」という話になるのは、当然のことです。
日本コカ・コーラ時代、「綾鷹」にフォーカスすることも「太陽のマテ茶」の発売も、周囲は大反対でした。でも、私はあきらめませんでした。部下にも、「絶対やろう」と鼓舞し続けました。
そうやって周囲を巻き込むことで、「和佐がここまで言っているし、頑固だし、しょうがないな」というところまで持っていくことができたのだと思います。フォロワーがいてくれたからこそ、リーダーになることができたのです。
和佐高志(わさたかし)1990年、同志社大学文学部新聞学科卒業後、P&Gジャパン・マーケティング本部入社。医薬品、紙製品のマーケティングに始まり、化粧品&スキンケア、洗濯関連カテゴリー等を担当。ブランドと人材育成の実績を重ね、ブランドマネジャーからマーケティングディレクターへ。2006年、紙製品、化粧品&スキンケア事業部担当のジェネラルマネジャーとして、P&Lの責任を持つ。2009年より、日本コカ・コーラのお茶カテゴリーマーケティング責任者。「太陽のマテ茶」や「からだすこやか茶W」などの新製品発売および「綾鷹」ブランドの立て直しなどによるお茶カテゴリーV字回復を実現。2013年、同社副社長に就任し、「ジョージア ヨーロピアン」「世界は誰かの仕事でできている。」キャンペーンなど複数の大型ブランドのビジネス拡大推進をリード。2019年にコカ・コーラ社世界初となるアルコールブランド「檸檬堂」の開発責任者として成功を収め、最高マーケティング責任者に就任。2020年、日経クロストレンドが選出する、マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞受賞。2023年、同社を退社。株式会社Jukebox Dreams(ジュークボックスドリームズ)を設立、同社代表取締役CEO就任。