私たちはふだん、人体や病気のメカニズムについて、あまり深く知らずに生活しています。医学についての知識は、学校の理科の授業を除けば、学ぶ機会がほとんどありません。しかし、自分や家族が病気にかかったり、怪我をしたりしたときには、医学や医療情報のリテラシーが問われます。また、様々な疾患の予防にも、医学に関する正確な知識に基づく行動が不可欠です。
そこで今回は、21万部を突破したベストセラーシリーズの最新刊『すばらしい医学』の著者で、医師・医学博士の山本健人先生にご登壇いただいた、本書刊行記念セミナー(ダイヤモンド社「The Salon」主催)の模様をダイジェスト記事でお届けします。(構成/根本隼)
Q. 1日に分泌される消化液の量は?
①2リットル
②5リットル
③7リットル
④9リットル
A. ③7リットル
摂取した食べ物を消化してエネルギーとして利用するために、人体が約7リットルの水分を毎日分泌しているということです。かなり衝撃的な多さではないでしょうか。
内訳は、唾液が1.5リットル、胃液が2リットル、胆汁が0.5リットル、膵液が1.5リットル、腸液が1.5リットルです。これに、飲食で口から摂取する2リットルを合わせて、1日で合計9リットルもの水分が消化管を通っています。
もしこれだけの水分がそのまま肛門から排出されたら、脱水で死んでしまいます。実際には、消化に使われた水分のうち、小腸で7.7リットル、大腸で1.2リットルが吸収されています。残りの水分は、食べたものと混ざり、便となって出ていきます。
人間は、肉や魚、野菜といった食べ物を体内に取り込むことで、エネルギーを生み出します。非常に便利な機能ですが、日光を浴びるだけでエネルギーを作れる植物に比べると、とても手間がかかっています。
私たちがふだん、何も意識せず食事をしているうちに、実は体内でこれほど大がかりな消化のプロセスが繰り広げられているのです。
小腸と大腸、すべて摘出しても生きていけるのは?
先述のように、消化のプロセスにおいて、大腸は「水分の吸収」という重要な役割を果たしています。しかし、病気によって、大腸を全て摘出する手術を行なっても、生きていくことが可能です。
大腸を失うと便の水分量が多くなるので、排便回数が増えるなど生活は不便になってしまいますが、生命は維持できます。
一方で、小腸を全部摘出してしまうと永久に点滴しなくては生きていくことができません。というのも、小腸は水分とともに、人体に必要不可欠な栄養素も吸収しているからです。
ただ、小腸は約6メートルもある長い臓器なので、部分的な切除は可能です。個人差はありますが、例えば1メートルぐらい切除しても生活に大きな支障はありません。
もちろん、小腸をたくさん切除して残りの部分が短くなるほど、栄養失調になりやすくなります。ある程度までは点滴で栄養を補うことはできますが、すべての栄養素を点滴だけでカバーすることは難しい。
小腸と大腸は一見似ていますが、切除すると生命に危険が及ぶのは、実は小腸なのです。
(本稿は、ダイヤモンド社「The Salon」主催『すばらしい医学』刊行記念セミナーで寄せられた質問への、著者・山本健人氏の回答です)