たくさん英語を勉強したのにいつまでたっても話せる実感が持てない――そんな英語学習者から「最短で英語の表現力をつけるならこれ」「会話で使える用例が半端なく多い」と絶賛の声を集める本がある。『話す力が身につく5分間英単語』だ。著者は、英字新聞The Japan Times Alpha編集長を10年以上務める高橋敏之さん。本稿では「AI時代に英語を学ぶべき理由」を教えてもらった。
AI時代にも、英語を学ぶ意義は大いにある
前回の記事では、AIを活用した3つの英語独学法を紹介したが、AI時代に英語を学ぶ意義についても考えてみたい。
自動翻訳が発達すれば、英語を身につける必要はないと考える人が出てくるのも無理はないが、結論から言うと、意義は大いにある!
英語を話せるようになる大きなメリットと言えば、海外にも交友関係を広げられることだろう。
そもそも、同じものを見て・聞いて、一緒に笑ったり感動したり、その気持ちを共有し合ったりできるのが友達だ。そのためには、共通の言語(国際社会では主に英語だ)でコミュニケーションを取れるということが必須になる。
これに対し、「リアルタイムでAIが翻訳すれば、外国語のスキルがなくても一緒に笑ったりできるのでは?」という意見もあるだろう。
残念ながら、必ずしもそうではない。翻訳では、どうしても元の言語のニュアンスは100%伝わらないからだ。
1つ例を示そう。米コメディードラマ『Friends』で、主人公の一人Rossが、Emilyという女性と結婚することになった。ところが、両家の両親が、結婚式当日にいがみ合っている。堪りかねたRossがこう叫ぶシーンがある:
"This is our wedding day! From now on everyone gets along, and if I hear one more word. NO GRANDCHILDREN!"
From now on everyone gets alongという台詞がやや難しいが「今からは、みんな仲良くすること」といった意味だ。
ポイントは最後のNO GRANDCHILDREN! のところ。
試しに日本語字幕を表示させたところ、「孫の顔は見せないよ」となっていた。……正直、これではこの一言の面白さが半分以上削られてしまう。
そもそも、こうしたNo ~は、No TV tonight!(今夜はテレビ禁止!)や、No ice cream today!(今日はアイスクリームを食べさせませんからね!)のように、主に親が子どもを罰するときなどに使う表現だ。
それを、子どもが親に言うという逆転現象や、テレビやアイスではなく孫という人間に対して使っているという意外性が、この台詞の本質だ。残念ながら、こうしたものは翻訳の過程で失われてしまう。
一方で、英語を学んでいれば、原文のニュアンスをそのまま理解して、楽しんだり感動したりできるというわけだ。
もちろん、英語でちょっとした用を足す程度のことができればよいという人であれば、無理に学習をしなくてもAI翻訳を利用すればよいだろう。
しかしながら、前述のように海外にも交友関係を広げたければ、やはり英語のスキルは必要。つまり、自動翻訳の発達に伴って、英語を必要とする人の割合は低下しているものの、それでも学ぶ意義は失われていないというわけだ。