そばは江戸時代のデトックス料理?
「かっけに有効」といううわさも
また、そばは当時から健康に良いイメージがあったようで、元禄年間に記された『本朝食鑑』(医者執筆の食材の百科事典)では、「蕎麦は気を降ろし腸を寛し 能く腸胃の滓穢積滞(しぎせきたい)を練る」と記されている。身体から余計なものを流す、デトックスのような概念だろうか。
そこに、江戸の町を原因不明の病「かっけ」(「江戸わずらい」とも)が襲った。そのとき、「そばがかっけに有効」といううわさが流れ、一気にそば店が急増し、年越しそばとしても選ばれるようになった、という説もある。なお、かっけに有効とされるビタミンB1はそばの実に多く含まれており、うわさはあながち迷信でもなかったようだ。
もっとも、これらの理由がなくても、江戸の町にはそばが向いていたのかもしれない。武蔵野台地は、火山性の土(黒ボク土)で覆われており、痩せた土でも育つそばの実以外の選択肢があまりなかったのだ。東京・多摩の名物として知られる「深大寺そば」も、土地が稲作に向かず、農家が代わりにそばを栽培して深大寺に寄進したことが由来だという。
年越しそばが根付いてから300年以上。一方の、うどん陣営はどうだろうか。年越しに「そばではなく、うどん!」という地域は…やはり、あの県だ。