金利上昇で「経営が危うくなる」鉄道会社・路線は?“マイナス金利解除”の衝撃迫る東西線の高架区間をゆく東葉高速鉄道1000系 Photo:村上暁彦/PIXTA

利息の支払いに追われる
東葉高速鉄道と北総鉄道

 前述の事情を抱えた首都圏の鉄道といえば、どちらも千葉県の「東葉高速鉄道」と「北総鉄道」である。2社の主な経営指標は以下の通り。

東葉高速鉄道
・営業収益:147億円、営業利益46億円、純利益:26億円(23年3月期決算)
・長期債務残高:2297億円(同上)
・建設費:2948億円

北総鉄道
・営業収益:139億円、営業利益28億円、純利益:17億円(23年3月期決算)
・有利子負債:578億円(同上)
・建設費:1298億円

 一見すると2社とも営業利益率が高く、経営は順調そうに見える。ところが、有利子負債が莫大で、その返済(利息の支払い含む)が経営上の重荷となっている。
 
 特に東葉高速鉄道に対しては、こうなった経緯に筆者は同情してしまう。地元の反対や土地収用の遅れ、果ては建設中のトンネル陥没事故などで、当初見込みの3倍になる2948億円に膨れ上がった建設費用を、運営のために設立された「東葉高速鉄道」が引き継ぎ、25年間の分割で支払うことになった。

 第三セクター系私鉄は基本的に、“お役所仕事”で暴騰した建設費用をそのまま引きずり、返済費用を稼ごうにも、どんぶり勘定的な需要予測を基にしているので開業当初は赤字続き。東葉高速鉄道と北総鉄道もご多分に漏れず、支払いは早々に行き詰まり、分割回数の変更で支払い期限を東葉高速鉄道は最大60年間、北総鉄道は45年間に引き延ばし(猶予措置)、辛うじて今に至る。

 なお、北総鉄道は開業当初の毎年の赤字を、株主である京成電鉄からの緊急融資でしのぎ、「本社ビルをプレハブに移転」「社員に支給するワイシャツをやや薄手のものに変更」といった涙ぐましい節約で、薄氷を踏むかのように年度末を乗り切ってきたという。

 現在は2社とも単年黒字に転換し、利益も出せるようになったが、負債の完済はまだ見えない。かつ、支払利息額が上振れしそうな状況である。東葉高速鉄道によると、「金利が0.1%上がるたびに、利息の支払額が3億円増える」。リーマンショック後は超低金利に助けられ、22年度の支払利息は7億8200万円にとどまった。が、千葉県が出した試算によると、高金利かつ運賃収入がコロナ禍前の9割にしか回復しなかった場合、「最短で2028年に運転資金がショートする」可能性があるという。

金利上昇で「経営が危うくなる」鉄道会社・路線は?“マイナス金利解除”の衝撃迫る北総鉄道7500形 Photo:スポッティー/PIXTA