このようなGX革命によって、これまで安定していた取引先との関係性が脱炭素への取り組み状況で大きく変わる可能性があります。大企業と強固な関係を築いている中堅企業であっても、脱炭素への対応が遅れれば取引が終了する一方、大企業は脱炭素に対応している企業を探しはじめているため、新たな取引先として皆さんの企業が選ばれるかもしれません。

 小さい企業にとっては、大きい企業に勝つ250年に一度の下剋上のチャンスです。

あらゆる商品に加わる
新しい価値「カーボン」

 GX革命において最も重要なポイントをお伝えします。

 それは、あらゆる商品に「カーボン」という価値が加わることです。

 脱炭素を目指す社会では、消費者は低カーボンの製品を購入し、メーカーは低カーボンの原材料を調達し、金融機関はカーボンニュートラルに取り組む企業にお金を貸し出し、政府はカーボンニュートラルに取り組む企業に補助金等で後押しをします。

 これに合わせて、商品価値も大きく変わります。例えば製造業では、品質(Q:Quality)、価格(C:Cost)、納期(D:Delivery)の3つの価値のもとで生産や開発がおこなわれてきました。カーボンニュートラルの社会では、この指標に炭素(C:Carbon)が加わり、QCDCの4つの価値で生産や開発がおこなわれるようになります。

 この価値転換の大前提として、現在の経済構造ではすべての製品が市場に出るまでに、多かれ少なかれCO2が発生しているという事実があります。普段はあまり意識していない方が多いと思いますが、例えば高炉の鉄を1トン生成するとCO2が約2.2トン発生します。製造業においては、中小企業であっても原材料の調達から加工、運搬まで見ていくと、多くのCO2を排出しており、この炭素(Carbon)とは無関係でいられません。

 私たちの経営戦略や商品も、脱炭素社会に適応するため、今までのQCDによる提案から、QCDCに沿った商品価値設計や提案をおこなう形に転換する必要があります。CO2排出量の価値を管理し、CO2排出量を削減できるような商品企画や製品設計、製造方法を提案していくことで、社会の求める価値を提供する企業になることが可能になります。