熱い湯に長時間入ると血圧はどうなる?
お風呂は41℃以下、10分以内に

ヒートショックを起こさない室温は?香川、大分、鳥取……温暖な地域ほど要注意苅尾七臣自治医科大学循環器内科部門教授

 ところであなたは、顔を洗うとき「水で洗う派」「お湯で洗う派」のどちらだろうか。

「特に男性は、目を覚ますために『水で洗う派』が多いのではないでしょうか。朝、冷たい水に触れると、血管が収縮して急激に血圧が上がり、ヒートショックを起こす恐れがあります。水で洗う派の人は、お湯で洗うようにしてください」

 ヒートショックは、室温が低い浴室でも起こりやすい。予防のためには、入浴の仕方にも注意が必要だ。

「熱い湯に長時間入ると血圧が急激に低下して、意識を失い溺死するケースがあります。風呂の温度は41℃以下にし、浴槽につかるのは10分以内にしましょう。浴槽から上がるときにも、血圧が下がってふらつき転倒につながりやすいので、浴槽のフチや手すりにつかまり、頭を少し下げたままゆっくり出るようにしてください」

 特に、高血圧の治療のために降圧薬を服用している人は血圧が下がりやすいので注意したい。また、飲酒後は血圧が変動しやすくなるので、アルコールを飲んでからの入浴は厳禁だ。高齢になるほど失神や転倒が起こりやすいので、高齢者は家族に一声かけてから入浴するようにすることも大切とされる。

 さらに、夜中や明け方、朝には、トイレでもヒートショックが起こりやすい。

「立ったまま排尿すると血圧の変動が大きく、ふらついたり失神したりしやすくなります。ヒートショックを防ぐためにも、男性も座って排尿するようにしましょう」

 トイレを我慢すると血圧が上がりやすいので、布団から出たくない、暖かい部屋から出たくないからといって我慢したりしないようにしよう。家の中で動きやすくするためにも、トイレや浴室、脱衣所、廊下なども含め、室温を18℃以上に保つことが重要なのだ。

 苅尾先生が気温などの環境と高血圧の関係の研究をするようになったのは、冬になると、明らかに高血圧患者の血圧が上がり、急性心筋梗塞や脳卒中、大動脈解離などを起こして救急搬送される人が多発するのを目の当たりにしたからだという。

「冬の高血圧は正に、生活環境病です。家の室温を最低でも18℃以上にすることで、高血圧の悪化やヒートショックを防げる可能性が高まります。新年こそ、自宅の室温対策に取り組んでほしいと思います」

(監修/苅尾七臣 自治医科大学循環器内科部門教授)