「こんなに利益が出たのに、手元に残るお金はわずか」
経営者なら、誰しも一度はこう思うはずです。だからといって、小手先の節税に躍起になってはいけません。会社のお金を1円でも多く残し、そのお金を会社の投資にまわし、会社をより成長させる。それこそが経営者の仕事です。
本連載は、「1円でも多く会社と社長個人にお金を残す方法」を学ぶものです。著者は、財務コンサルタントの長谷川桂介氏と公認会計士・税理士の黒瀧泰介氏です。インボイス制度、各種法律に完全対応の『今日もガッチリ資産防衛――1円でも多く「会社と社長個人」にお金を残す方法』の著者でもあります。経営者の超リアルなお金の悩みに対し、あますところなく解決策を提示した1冊になっています。

家族への給料を「全額経費」にする方法Photo: Adobe Stock

青色申告のすごいメリット

 青色申告をすると、家族従業員に給与を支払った場合、その給与が適正な水準である限りは全額を経費にすることができます。一方の白色申告では、配偶者で86万円、その他の親族で50万円までしか控除されません。

 手伝ってくれている家族にお金を渡すことは、個人事業主や中小企業であればよくあります。これを全額給与にし、かつ経費にできるわけです。

 月10万円ずつ渡していたとして、年間で120万円。もちろん給与として払うと社会保険料などもかかってくるのですが、差し引きすると給与で経費計上するメリットのほうが勝ります。

 全額経費として計上できるのは、とても大きなメリットです。しかし大きなメリットであるからこそ、条件や注意点がいくつかあります。ここでしっかり確認しておきましょう。

青色事業専従者の条件・注意点

条件
 ・青色申告者と生計を一にする、配偶者や15歳以上の親族であること
 ・その年に6ヵ月以上事業に従事していること
 ・外部から給与をもらっていないこと

注意点
 ・事前に税務署に届出が必要
 ・労働の対価として相当と認められる金額でなければならない

「労働の対価として相当と認められる金額」を決めるのはなかなか難しいところですが、多めに渡しすぎるのはNGです。

 かつて税務調査で、副業でアパートの賃貸経営をしている会社員が、奥さんに不当に給与を払いすぎているとして否認されたケースがあります。

 奥さんに給与を支払う妥当性は、奥さんがどれほど賃貸経営の経験を持っていて、どれくらい働いているか、いわば『奥さんの賃貸経営能力』によって判断されます。

 この事例では、奥さんにアパート経営の経験がなく、すべて管理会社が業務を行っていました。そのため最高裁で、「年間100万円の給与でも妥当ではない」という判決が出たのです。働いている実績や能力がないのに、名目だけで給与を支払うのはダメということです。

(本原稿は『今日もガッチリ資産防衛――1円でも多く「会社と社長個人」にお金を残す方法』から一部抜粋、追加加筆したものです)