年収が上がらない、モチベーションが上がらないという人たちに「仕組み化がすごい」「圧倒的に面白い」「すごいエネルギーをもらった」と話題なのが、森武司著『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。FIDIA(フィディア)の森社長はお笑い芸人引退後、ニート、ヤマダデンキを経て仲間と起業。現在年商146億円、Financial Times「アジア太平洋地域急成長企業ランキング 未上場日本一」、「ベストベンチャー100」受賞、経済産業省選定「地域未来牽引企業」、11事業すべて黒字化、新卒500人採用、創業以来18年連続増収増益を果たした。また、素人ながら化粧品開発に取り組み、資生堂を抜いてアマゾン年間売上1位となった。その秘密は「仲間力アップマル秘マニュアル」の6大奥義にあるという。今回はビジネスパーソンにとっても重要な撤退のコツを見ていこう。

潔い撤退Photo: Adobe Stock

撤退を躊躇する3つの理由

 部下にプロジェクトを任せたとき、このまま続けても勝算がないと感じても、なかなかやめどきがわからないときはないだろうか?

 成功率100%はありえない。
 いつか撤退しなければならない瞬間はくる。

 だが、一度動き出したプロジェクトを途中で「やめましょう」と言い出すのは難しい。
 こんなときこそ、頼りになる上司の出番だ。
 思い切った撤退の決断が吉となることが多い。

 なぜ、撤退を伝えるときに躊躇するのか?
 だいたい3つの理由が挙げられる。

 1.上司に撤退を伝えるのが気まずい
 2.今までかけた時間と予算がすべて無駄になる
 3.プロジェクトの責任者が継続を望んでいる

「今から始めるならどうか」だけ考えよう

 1つ目は、あなたの都合でしかない。
 会社にとっては何の価値もないので無視していい。
 そんなことで躊躇している時間が一番無駄だ。

 2つ目は、「サンクコスト」(埋没費用)といわれるもの。
 これまでかけた時間やコストが気になり、未来の損失を冷静に判断できない状態だ。

今から始めるならどうか
 参入(開始)するのか、しないのか。

 これだけを冷静に考えてほしい。
 今から参入しないなら、過去にかけた時間やコストは関係ない。

 これは株式取引でもよく陥る失敗だ。
 今買う価値のない株なら、潔く損切りが正解。
 いつかは値上がりするかもとサンクコストを気にして持ち続けるくらいなら、潔く損切りして残ったお金で次の株に投資するほうがよっぽど有意義なのだ。

 このように、サンクコストばかり気にしているのは、時間の無駄だ。

最も誤解を生んでしまう理由

 実は、3つ目が最も誤解を生んでしまう。
 本人に「本当にこのプロジェクトを続けたいのか?」と確認すると、サンクコスト、プライド、プロジェクトへの愛着などで「継続したい」と言うケースがほとんどだ。

 ただ、これは当事者なので冷静な判断ができないケースが多い。
 この場合、チャンスを失いたくないなど、事業の成功とは関係ない感情も入ってくるので、本人の意思を汲んでのプロジェクト継続は危険だ。

 冷静に未来の成否で撤退を判断したい。

 これ以上継続してもダメだと判断するとき、最も正当化される理由は何だろう。

 ダメなプロジェクトを継続していると、その責任者のキャリアと給料が上がらなくなる。つまり、プロジェクト責任者の人生をつぶしてしまうのだ。
 これがほぼすべてだろう。

複数の人生が無駄になっている!

 そう考えると、1や2の理由はいかにチープでどうでもいいことかわかっただろう。

 一人の大事な社会人人生をつぶしてしまう可能性があるのに、「撤退を伝えるのが気まずい」とか、「これまでかけた時間やコストがもったいない」とか言っている場合ではないのだ。

 本人を救う意味でも、胸を張って可能性のないプロジェクトなら撤退を伝えるべきだ。

 一人ではなく、そこに複数のメンバーがいるならなおさらだ。

 複数の人生が無駄になっている
 それが失敗プロジェクトの継続だ。

 ダメだと判断したら、すぐに撤退が正当化されるのは以上の理由だ。

 僕らは、一見関係のなさそうな11の事業をすべて黒字化してきた。
 気合と根性で全事業を黒字化させたと思うかもしれない。
 だが、それは違う。
 これ以上続けてはダメだという事業は潔く撤退している。

 だからこそ、今残っている事業のビジネスモデルは堅牢で黒字化しているのだ。
 どうやって黒字化しているのか。それは本書をぜひ参考にしてほしい。

(本稿は『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者による特別投稿です)