これは勤続年数が長い人ほど高くなり、会社への忠誠心の高さがうかがえる項目である。しかし、ポスト団塊世代の就業者については、就業5年未満の再就職者についてもこの項目は高いのである。

 つまり、新しい職場における再就職であっても、単なる時間つぶしや生活賃金稼ぎのためではなく、新しい職場の発展のために従事する意識の高さが、ポスト団塊世代の就業者にはある。

図_就業意識(現役世代就業者vs.ポスト団塊世代就業者)(注)会社役員および事業主を分析対象から除外している。出所/NRI「生活者1万人アンケート調査」(2021年版)。訪問留置法により一戸づつ訪問し、層化二段無作為抽出法で地域・性年代構成が日本人の縮図となるようにランダムに抽出された対象者に回答を依頼している。 拡大画像表示

定年後の40年に意義を与える
社会貢献欲求をどう満たすか

書影『データで読み解く世代論』(中央経済グループパブリッシング)『データで読み解く世代論』(中央経済グループパブリッシング)
林 裕之 著

 シニアの再雇用・再就職の業務内容では軽作業や清掃、警備といった職種が多く存在するが、シニアにおける会社や組織への貢献意識を汲み、これまで培ってきた経験・スキルの活きる職種や後進の指導を担うポジションを増やすことはシニアの活躍の場を広げると共に、会社・組織の発展にも有効に機能するだろう。

 なお、会社役員や事業主を除いた一般的なシニア就業者における会社に対する発展意識は、都市や地方といった居住エリアや居住地の都市規模の違いによってあまり左右されない意識であることが分かっている。

 このようなシニアの職務に対する意識の高さは、都市部や地方等のエリアや都市規模に左右されず、幅広くシニアが共通して持つ価値観であることがうかがえる。

 アメリカの心理学者マズローは、人間の欲求は5段階のピラミッド構造となっており、底辺側から「生理的欲求」、「安全欲求」、「社会的欲求」および「承認欲求」が積み重なり、最上段に成長欲求としてあるべき自分になりたい「自己実現欲求」があるという「マズローの欲求5段階説」を説いていたことは有名である。

 しかし、マズローが晩年にこの5段階に加え6段目として、自己を超え他人の利益(利他)を目指す「自己超越欲求」を説いていたことをご存じであろうか。

 この欲求は社会貢献欲求と言い換えてもよいだろう。社会に参加し活動することによって自分自身に役割を与えることは、シニアにとっても本来人間に備わっている成長欲求の延長であり、充実した生活を送る本質的な要素であると考えられる。

 会社で働く期間を40年、人生を100年とした場合、実は第2のシニア人生を過ごす時間は会社で働く時間とほとんど変わらない。人生の後半戦は想像以上に長いが、一方で高齢に伴う身体的な不自由さもまた避けられないことである。

 身体面の不自由さはデジタル活用によって支え、社会的交流によって精神面が豊かになることで、団塊世代やポスト団塊世代の人たちが生きがいに満ちたシニアライフを謳歌できる人生100年時代の実現を願いたい。