能登地震で医薬品の配送を阻んだ「悪路・渋滞・ガソリン不足」と救世主【現地レポート】写真提供:医薬経済社
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 北陸地方の医薬品卸ファイネス七尾支店の表直記支店長が、大きな揺れを感じたのは元日の午後4時10分頃、家族5人で実家のある石川県志賀町で過ごしていたときだった。「このままだと家が潰れて家族全員が死んでしまう」と思えるほどの揺れに、動くことができなくなった。マグニチュード7.6、東日本大震災に匹敵する規模の地震が能登半島で発生。最大震度7が志賀町で観測された。

 表支店長は割と丈夫な部屋にいたのが幸いし、怪我はなかったが、その後もいつ来るかわからない余震が怖く、家族とともに避難所に身を寄せた。家族の安全に、余震の恐怖、そして頭の中にあったのは今後、被災地で必要とされる薬の供給のことだった。ファイネスは北陸・中部で8支店、3営業所を展開。その中でも七尾支店は、能登半島の医療機関に薬を運ぶための拠点で、被害状況が気になった。

 災害時にまず必要となる物資が水と食料。冬ならば毛布や灯油も重要な物資だ。地震で怪我人が出れば、治療で使う薬がいるし、高齢者が多い地域になれば糖尿病や高血圧といった生活習慣病の治療薬が求められる。しかし、医薬品は水や食料と違い、専門とする卸が運ぶ必要がある。社員や支店が被害を受ければ災害医療に遅れが出かねない。災害発生からどれだけ早く支店や配送センターを復旧できるかが、その後の被災地での医療体制に大きな影響をもたらす。