冬のおすすめ日本庭園[3](龍安寺/京都)

【冬の日本庭園】訪日外国人ガイドの目線から再発見する名庭園風景の眺め方と感じ方1975年、エリザベス2世が訪れ称賛したことでも有名な龍安寺の枯山水庭園

 京都には、冬におすすめの枯山水庭園が多くあります。そのひとつが世界遺産でもある龍安寺です。

 龍安寺の方丈庭園は、白砂に大小15個の石が並べられた非常にシンプルなデザインですが、どこに座って眺めても、一度にすべての石が見えない造りとなっています。この意図は、諸説ありますが、東洋の世界では月が15日で満ちることから15は「完全」を表し、どの位置からも15個の石が見えないことは、すなわち「不完全さ」を表しているといわれています。

 日本には「物事は完成した時点から崩壊が始まる」という思想もありますので、庭園を眺め、不完すべてや欠点を知り、常に完全や満ちた状態を目指す精神が表現されているのではないでしょうか。無駄を削ぎ落とした枯山水庭園の前で、禅問答のような終わりのない問いかけを、時間を気にせずしてみるのも、楽しみ方のひとつです。

 砂と石で組まれたシンプルな庭園も、冬の雪化粧により違った美しさを感じることができます。春や秋と比べると拝観者も少ないので、庭園の意味や日本的哲学を感じながらゆっくりと庭園の魅力に浸ってみてはいかがでしょうか。

茶室へと続く小さな庭園「露地」

 最後に紹介する庭園は「露地(ろじ)」です。露地とは、茶室に付随して作られる庭園を指し、茶庭とも呼ばれます。室町時代以降、武士や商人が好んだ茶の湯は、街なかでも日常から離れて静かな空間を楽しめるよう露地を設け、入口からその世界観を楽しめるようにデザインされました。

 決して大きくない露地ですが、そこには和のエッセンスが多く含まれています。

 樹木や苔に彩られた山里をイメージさせる空間は、自然との調和や一体感が表現され、季節ごとに異なる美しさを感じることができます。そのなかに配置される夜の茶会で使用される石灯籠や、歩くスピードを調整するように配置された飛石、手と口を清めるための蹲踞(つくばい)など、スペースが大きくないぶん、ゲストをおもてなしするための配慮が隅々まで行き届いています。

 当時の人々は、露地を含めた茶の湯という文化を通して、静寂や非日常を感じ、内なる平安や調和を追求していたのです。