ストレートなものがウケていた傾向は、どうやら少年マンガにもある。『ドラゴンボール』の連載は1984~1995年(昭和59~平成7年)で、『ONE PIECE』の連載開始が1997年(平成9年)である。悟空やルフィなどの少年マンガの王道主人公は、信念を貫くために苦境を乗り越えながら戦っていく超人的な強さと精神性に、主人公としての魅力とカリスマが宿っていた。
一方、社会現象になったことが記憶に新しい『鬼滅の刃』は連載が2016~2020年(平成28~令和2年)、テレビアニメ第一期の放送が2019年(平成31/令和元年)である。こちらの主人公の炭治郎は、王道マンガらしくきちんと超人的な強さと精神性を備えていた。ただし悟空やルフィが、見る人にリングの中で戦う超人を応援するような構えを取らせていたのに対し、炭治郎は思わず寄り添い同じ目線で手を取って応援したくなるようなはかなさをも備えていた。
炭治郎に見るこの「強くまっすぐ」一辺倒でない主人公像は、何も『鬼滅の刃』発祥というわけでもないだろうが、時代の傾向を占うにあたって、ひとつの目印になるであろう。たとえばアニメ化も好評だった『チェンソーマン』(連載は2019~2021年、および2022年~)の主人公デンジは、炭治郎とはまったくベクトルが異なるが、「思わず寄り添って応援したくなる」要素を痛烈に備えている
令和の人々が心奪われる
「応援したくなるキャラ」
思えば、ファンが誰かを応援することを表す「追っかけ」という言葉は、近年では「推し活」「推し事」という言葉に取って代わられた。SNSで情報の間口が広がったこと、で大小いたる所でおびただしい数の推し活が行われるようになった。
発信者・表現者の活動を成立させるのは彼らを推しているファンであり、ファンが自身の喜びを「何かを推す行為」に見出す姿は、ピクミンやすみっコなどの「思わず応援したくなるキャラ」が人気を集める傾向と符合している。つまり、令和の人たちはどうやら「応援する」のが好きなようなのである。
なお、ピクミンは元から体長数センチという設定なので、キーホルダーなどのグッズ化と非常に相性がいい。「推し」を全力で推したい令和のファンを前にして、ピクミングミが即日売り切れ続出となるのは、どうやら必然だったようである。