テレビが「節約」をエンタメ化することで、日本経済がますます低迷しかねない理由写真はイメージです Photo:PIXTA

「節約」「激安」コンテンツは面白いが、悪影響

 先日、何気なくテレビをつけたら「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日系)というバラエティ番組で、「大調査!実はコッソリやってる節約テク30連発」というのをやっていて、思わず見入ってしまった。

 例えば、シャワーを出すとお湯が出るまで少し時間がかかることあるが、その「お湯が出るまで流れる水」を洗面器に溜めておいて、洗濯機に入れるなど有効活用をするという節約術が紹介されていた。他にも、外出前のトイレは家族全員が用を足し終わってからまとめて流すと、1カ月で約31円の節約になるというものや、バスタブに水を入れたペットボトル15本を入れてカサ増ししておけば、足を伸ばしてくつろぐことはできないが、1年で約2600円の節約になる…なんて驚きの節約テクが次々と紹介され、なんやかんやと最後まで視聴してしまった。

 ただ、たっぷりと楽しんでおきながら、こんなことを言うのも気が引けるが、「節約」をエンターテインメントとしてふれまわるのは、公共の電波を用いるテレビとしてはもうちょっとご配慮いただきたい。

「貧しいニッポン」などと揶揄される日本経済の低迷ぶりに、さらに拍車がかかってしまうからだ。

 ご存じのように今、日本経済が低迷している原因のひとつはGDPの6割近くを占める「個人消費」が冷え込んでいることに尽きる。23年10月時点の個人消費は未だコロナ禍前を下回っている。多くの人は労働で稼いだカネを節約しながらチビチビと使い、先行き不安な未来に備えて「貯金」に回しているのだ。実際に、貯蓄は増加しているというデータがある。

「二人以上の世帯における2022年平均の1世帯当たり貯蓄現在高(平均値)は、1901万円で、 前年に比べ21万円、1.1%の増加となり、4年連続の増加となるとともに、比較可能な2002年以降で最多となっている」(総務省 家計調査報告2022年平均結果の概要)

 このような「消費より節約」というケチ意識が強い中で、世論に大きな影響を与えるテレビでは、情報番組から夕方のニュースまで「激安スーパー」やら「コスパ最強グルメ」なんてキラーコンテンツがあふれている。そこにさらに「節約術」が加われば、本来はパーッとカネを使わなくてはいけない人々の財布のヒモがさらにきつくなる。「ケチこそ正義」となれば、投資も賃上げの動きも停滞する。そうなれば、「貧しいニッポン」はさらに歯止めがかからない。

「おいおい、このバカライターの頭は大丈夫か? テレビで朝から晩まで節約テクを紹介したところで、日本人全員が急に倹約家になるわけないだろ」という嘲笑が全方向から飛んできそうだ。

 ただ、歴史に学べばそうとも言い切れない。実は日本人はすさまじい「プロパガンダ(宣伝)」の力によって、個人の経済活動自体がコントロールされてしまった過去があるのだ。