移動と定住、どちらも共存させて
「あいだ」を行き来する

米田:今、greenz.jpは3人でやっているそうなんだけど、普段はまったく顔を突き合わせない組織なんですよね?

鈴木:ええ、散り散りですね。僕は千葉の房総にいて、あと2人は東京と鹿児島です。で、グーグルプラスの「ハングアウト」を使って、週に3回ぐらいオンライン会議をやっています。だから基本的に出社という概念がないし、帰る時間も当然決まってない。プロジェクトベースで動いているんです。

米田:でもオフォスはあるんですよね?

鈴木:うーん、辛うじて住所は(笑)。でも今後は恐らく、そこで全員が顔を合わせることはないでしょうね。逆にイベントのとき、たとえば「green drinks」のときとかには必ず会いますけどね。でも、これまで完全に散り散りにやっていたけれど、最近逆に「場所」を意識し始めているんですよ。夏ぐらいには、港区あたりにそういう拠点を作ろうと思っていて。

米田智彦さん

米田:そこは、いわゆる編集部のアドレスになるのかな?

鈴木:編集部というか、面白いことがどんどん起きる場所にしていこう、と。毎日いろんなトークライブやワークショップが行われたり、コワーキングスペースみたいなものがあったり、夜はバーでお酒が飲めたり。とにかくいつもアンテナを張っている面白い奴らが集まっていて、会話が起きている。そこに行くと必ず「何か」があるというような場所を、逆に作りたくなってきたんです。

米田:メディアがあって場所があれば、人の流れがそこに必ずできるんですよね。それがコンテンツとなって、またメディアに還流していく。

鈴木:そうなればいいですけどね。あとこの場所は、疑似政府みたいな仕組みにしたくて。つまり、選挙があるんです。

米田:ん?AKB48みたいな感じですかね?

鈴木:まあ、そういう言い方もできるかも(笑)。「ミニ・ミュンヘン」って知っています?3週間という期間限定で、子どもだけで運営する都市ができるんですよ。その日本版で、「ミニさくら」とか「ミニ四日市」とかあるんですけど、要はその街の市民権を得たら、ハローワークに行けば好きな仕事がもらえたり、自分で新しい仕事を作ったりしてもいい。

 市長がいて、市議会があって、どうするかみんなで話し合って決めて、市民から税金も徴収する。商店街があり、そこでは地域通貨でやり取りをするんです。子どもたちが自分たちで街を作る、暮らしを作るということを体験できる場なんですけど、その存在を知って「羨ましいな」と思いまして。で、大人版のそういうものを作ろうと思ったんです。

米田:へえ、面白いねえ。「キッザニア」の大人版みたい(笑)。

鈴木:まあ、とにかく実験とか試みをやって、そこからいろんなものの断片が見えてくるようになったらいいな、と。まだ具体的に何をやるかは決まってないですけど、場所ができると新しいことができるな、って期待しているんです。

米田:ノマドをやってきた僕だけど、確かに、「移動」と「定住」の両方の人が必要だなとも強く思うんです。クラウドで、モバイルで、どこでもオフィス、どこでも住居という僕みたいなタイプも、どこかリアルな場所とも関わって、その中で次のチャンスを探ったり、育てたり、自分も育てられたりしてきたわけだから。ミツバチのように移動する人と場所やコミュニティを創る人がいて、これからは、そういうことがパラレルで同時に進んでいくんじゃないかな。

鈴木:根を張るのといろいろ動くのと、バランスが取れると一番健康的ですよね。