この件で思い出したのは、少し古い話ではあるが2011年にあったネット上の炎上事件である。

 このときも発端は性暴力の報道だった。大学生が起こした集団強姦事件について、同じ大学の学生が「別に悪いと思わないね」「女がわりー」などとツイートしたのだ。

 これが批判されても学生は強気な態度での反論をやめず、ネット上に本人が公開していた内容から内定先などの個人情報が特定されるに至った。結果的に内定先と疑われた企業が、「この学生が入社しないことを確認している」という内容の発表をするほどの炎上となってしまった。

 今から13年も前の出来事だ。当時よりも今の方が性暴力に関しての社会の目は厳しくなっているように感じるが、このような典型的な二次加害は繰り返されてしまう。

 松本氏、伊藤選手の報道の後、「飲み会で○○が(松本氏や伊藤選手を)擁護していてショックだった」という話を耳にしたり、SNSで見かけたりすることがあった。○○には、友人や上司、同僚などが入る。

人気者が叩かれるのはおかしい?
価値観のアップデートが必要では

 現代でも、特に男性が集まる場所では「男だけの会話」が盛り上がり、その中では「ハニトラ」といった言葉が易々と使われてしまうことがある。そして、そのノリをそのままネット上でも全体公開してしまう人が中にはいる、ということだろう。

 M氏はおそらく、Facebookは身内ノリの安全地帯、という認識だったのではないだろうか。

 その投稿を見ているのが同じノリの人だけならば問題にはならないが、そうではない人や、さらには全く知らない人にまで届いてしまうのがインターネットだ。

「ハニートラップかもしれないじゃん。サッカー負けたじゃん」は、飲み会では笑って済まされるかもしれないし、発言者が地位のある人物であれば咎めない人の方が多いだろう。しかしひとたび炎上して、多くの人の目に入れば、日頃は「勝ち組」であった人の方が痛い目を見る。

 社会に出たばかりの新人が先輩ビジネスパーソンから言われがちなのが、「不平不満を言うよりまず自分のできることを」とか「人を変えようとするよりも、自分を変えよう」といった言葉である。

 こういった言説に沿うのであれば、時代が変わって息苦しいと嘆くよりも、自分を時代に合わせて多少なりともアップデートした方が生きやすくなるのではないか。告発された人気者が叩かれる昨今の風潮がおかしいと感じる人には、そう伝えたい。