中小型株のプライム市場退出
注意すべき「平均値」マジック
ただし気を付けるべきは、上場企業数の減少による1社当たりの平均時価総額の増加は、機関投資家の行動変化につながらないということだ。中小型企業のプライム市場からの退出は、大企業の時価総額や流動性に変化を与えるわけではない。これらは数字上の話に過ぎない。
ここで簡単な計算をしてみよう。主要国の大型株を中心に作られた株価指数であるMSCI指数に採用された日本企業は約260社あるが、この約260社だけで日本の時価総額の85%前後をカバーしている。
そして、MSCI指数に組み入れられていない約1,400社(プライム市場・上場企業数の約85%)が全て上場廃止になったと仮定しよう。するとプライム市場の上場企業数は85%減となり、1社当たり平均時価総額は5.4倍となる。しかし、プライム市場に残った大手企業の時価総額や流動性は、こうした動きから何も影響を受けない。“平均値”という見かけ上の改善に過ぎない。
下位企業の振るい落としは、上位企業の時価総額の増減にとってニュートラルであり、東証改革にとって必要十分な施策と言えない。本質的には、上位企業も含めた上場企業が株式バリュエーションを上昇させ、各社の時価総額や流動性を高めることが重要だ。