具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
【お悩み】年度末といえば人事異動のシーズン。新しい部署への異動は新鮮である一方で、長年にわたって続けてきた仕事に愛着のある方も多いはず。実績もあり、人間関係も良い職場から異動することになった40代のミドル社員が、新しい部署になじむためにはどうすればいいでしょうか?
【回答】前の部署での経験を捨て、新たなキャリアを再構築する
長年勤めた部署を離れるのは転職するくらいのインパクトがあり、不安になってしまうのは仕方のないことです。
とはいえ、ベテラン社員だからと言って異動先の部署では新人も同然。「待ちの姿勢」ではなく、自分から動いてみることをおすすめします。
業務について、あるいは部署のしきたりなどについて、自分から進んで確認する姿勢が大切なのです。
近年の仕事は、職種を問わず「プロジェクト型」が多くなってきています。固定されたメンバーではなく、その都度集まったメンバーとの業務です。
このことから、「急造のチームになじむ力」や、「相手を知ろうとする力」は、ベテラン社員であろうと、必須のスキルになっています。人事異動はそのスキルを磨くチャンスなのです。
社歴は長いが、新しい部署での業務経験はない。そんな社員を受け入れるメンバーも、戸惑いを覚えるはず。
手取り足取り仕事を教えるのは失礼な気がするでしょうし、経験相応に即戦力としての働きを期待していることもあるでしょう。
ベテラン社員だからこそ、自らチームになじみ、相手を知ろうとすることができれば、異動先の部署の人たちも受け入れやすいのではないでしょうか。
注意を要するのは、前の職場での「やり方」や「経験」を無理に新しい職場へ持ち込んでしまうこと。
必要なことは「アンラーン(=学習棄却)」です。
新しい職場では、新しい仕事を通してキャリアを作り直すことが大事です。
異動者の受け入れが、既存メンバーの関係を再構築させる
一方、個人ではなく組織の視点で考えたとき、異動者を受け入れるメンバーはどんなことに気をつければいいのでしょうか。
大切なのは、異動してきた社員が一体何を持っている人なのか、どんなスキルを持つ人なのかを知ろうとすることです。
たとえ技術職の人が総務部に異動するという場合でも、以前はどんな仕事をしていたのかをちゃんと知ってあげること。
例えば、「新しい社員が異動して来たから、改めて全員で自己紹介をしよう」としてみるのはいかがでしょうか。
「まずはお互いを知る」という姿勢が、新たな関係性の構築に結びつきます。
このことから、人事異動は既存のメンバーも含めた職場の関係性を、再構築するいいきっかけになります。
お互いを知り、全員の頭の中にチームの組織図のようなものが描けるのが理想です。
自分の位置づけや、活かせるスキルがどこにあるのかがハッキリすることで、お互いにとって安心な場になるのではないでしょうか。
(取材・文 間杉俊彦)